水清ければ魚棲まず
 和歌山県紀伊半島の山間の集落に「牟婁病=むろ病」という不思議な病気があることは、昔から知られていました。この病気になると、脳と脊髄の働きが失われるため、手足の筋肉が次第に萎縮し、力がなくなり、胸部の呼吸筋や食物を飲み込むのに必要な筋肉まで動かなくなって衰弱します。そして、この病気の治療法はありません。
 和歌山県立医科大学のグループ(木村名誉教授たち)は、この恐ろしい神経病の原因をはっきりさせるため、この地方に出張した折、ここを流れる古座川の「水が水晶のように澄んでいる」のに驚いたといいます。「水清ければ魚棲まず」ということわざがあるよう、実際、古座川には、その時、魚の姿が見られませんでした。
 この病気は、神経学的に「筋萎縮性側索硬化症」といい、脳と脊髄の変性を起こす病気でした。世界的に見て、紀伊半島はこの病気の発生率が最も高い地域だったのです。かつて中国の指導者として君臨した「毛沢東」も晩年には、この病気で苦しみ他界しました。
 この地域の場合は、工場の廃棄した毒性物質が病気を引き起こしたというのではなく、古座川の水があまりにも美しく澄んでいて、化学的には「純水」に近く「カルシウム」が足りないことが問題と判明しました。化学的にきれいな純水であっても、生物(生命体)はミネラル成分を含まない水を長い間利用し続けると、恐ろしい病気になるという事例です。きれいな水=純水という言葉は、とても耳触りが良いが、純水は生命体に調和しない水なのです。
 現在は、交通も便利になって、カルシウムを含む食品が自由に入手できるから、川水の中にカルシウムが少なくても摂取する方法はいくらでもあります。だから、カルシウム欠乏を起こすことはありません。しかし、他の地方との往来の少なかった時代には、川水や井戸水の中にカルシウムが少ないと、その水で栽培した農作物、その水で育った草を食べた家畜までがカルシウムの欠乏に陥り、食べる物すべてにカルシウムが少なくなってしまうことが珍しくなかったと考えられます。ミネラル成分は、水から摂取するだけでは十分ではありません。きちんとした食事から摂取することが基本なのです。
 私たち人間(ヒト)は、体内に海を持っていると表現されるが、海水と羊水との成分を比較すると、下表のようになります。

成分名称 水分(%) 固形成分(%) 化学成分(mg/l=ppm)
Cl- Na+ Mg2+ S2+ Ca2+ K+
海水 96.5 3.5 19,000 10,500 1,300 884 400 380
羊水 約98 約2 3,700 3,000 20 80 150


ミネラル成分(金属イオン群)の体内での働き

1.細胞内外の浸透圧の調整をする。

 細胞外液にはNa+(ナトリウムイオン)が多く、細胞内液にはK+(カリウムイオン)が多く存在していて、細胞膜内外のバランスを取っている。病態の人は、このバランスが崩れている。赤血球を純水にさらすと、浸透圧の調整ができず、破裂してしまう。また、純水中に金魚を入れると、たちまち死亡する。Ca2+(カルシウムイオン)が不足すると、神経系に悪影響を及ぼし、イライラ感が募り暴力的になる。人間が長期間に渡りミネラル成分のない純水を飲用すると、内臓疾患を引き起こす。

2.ミネラル成分は体内酵素を働かせる触媒
 私たちの体内には無数の酵素が準備されていて、食事の分解、消化、吸収を助けたり、老化を防いだりしているが、酵素は水のある場所で働く。実験してみたら逆浸透(RO)膜型浄水器で作った純水中での酵素の力は、ミネラル成分がないので、東京都の水道水に比較して3分の1しか発揮しなかった。体内酵素の働きの低い人は、体力・免疫力が弱く、O-157などに感染しやすくなる。

 逆浸透(RO)膜型浄水器による純水
 この型の浄水器が多用され始めたのは、ベトナム戦争の時以来でした。米軍は、ベトナムのジャングルに入り込む海兵隊に小型の逆浸透膜型浄水器を携帯させました。兵隊たちは、泥水を濾過して飲む必要があったからです。しかし、マニュアルには、「泥水を浄化した後の水には、ミネラルの錠剤を溶かして飲みなさい」と書かれておりました。それは、ミネラル成分のない水を飲み続けると、健康に悪い(内臓疾患の原因になる)からです。記憶に新しい湾岸戦争の時には、米兵たちはペットボトルの水(ミネラルウォーター)を持参しました。米兵たちがボトルウォーターを飲んでいるシーンがテレビで放映されたことを覚えているはずです。中国大陸の場合は、水が悪いので、ホテルでは各部屋に毎朝湯冷ましを用意してくれます。こうした背景から、米国製の逆浸透膜型の浄水器による純水ブームが1998年の夏まで続いておりました。しかし、健康に悪いことが判明したことから、上海市の政府は、1998年の8月以後、公共の施設(幼稚園、小学校、中学校など)での「使用禁止」の通達を出しました。