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支援費制度のゆくえ−介護保険との統合論議− 明治学院大学教授 中野 敏子 -JL NEWS 52号より- 介護保険との統合論議とは 新しく始まる支援費制度を不安と期待をもって迎えたのはちょうど一年前のことです。サービス利用者にとっては、新しく導入された「支給決定」や「利用契約」という手続きが必要となり、役所やサービス事業者とのやり取りで忙しい日々でもあったことでしょう。一年が経過するかどうかという時期に、今度は介護保険制度との統合という課題です。厚生労働省は2004年1月8日に『介護制度改革本部』を設置し、介護保険法の改正準備に取りかかっています。そこで、被保険者の範囲を広げることと、支援費制度との統合などを含めて論議していき、2005年の通常国会へ法案を提出しようというわけです。 一方、支援費制度自体がまだまだ理解されず、また、十分に実施されていない市町村もあり、全国からみると、これから利用する機会を待っている人たちがたくさんいます。しかし、発足した支援費制度も2004年度の財源が不足していることが問題とされ、厚生労働省は障害関連8団体( JD,日身連、DPI,日盲連、全日ろう連、脊損連合、育成会、全家連)へ「介護保険との統合案」を提案している状況です。居宅生活支援費のホームヘルプサービスがこの調子で実績があがると、国庫補助基準を上回って予算不足といわれます。図1は、市町村実績報告をもとに作られたグラフです。 介護の社会化と介護保険 2000年に実施された介護保険制度は、それまでの「高齢者の介護は家族が担うもの」という社会通念から「社会とともに担うものへ」と認識を変えるきっかけをつくったといえます。介護保険法の目的(第一条)によると、「加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態」の人で、「入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する」人が、「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」、サービス給付をするものです。とくに、「国民の共同連帯」という理念による保険制度です。「高齢による介護の必要性」というリスクに保険料を拠出し、特定の事態が起きたとき、約束された拠出に見合う給付が支給されます。 介護保険制度の導入背景には、高齢者人口の増加に対してそれまでの老人福祉法や老人保健法による対応では財源的にも無理という予測が成り立ったことがあります。介護保険の導入にあたって、1割自己負担によって、これまでの選別された人へのサービスから普遍的に多くの人にサービスが利用できる道を開くといわれました。また、ケアマネジメントや事業者の選択が可能などといったあらたな可能性も提示されました。 しかし、予想以上に介護保険のサービス利用者が増えているために財源確保が必要といわれています。市町村に任されている保険料には地域差があります。40歳以上を被保険者として市町村レベルで展開するその介護保険もすでに赤字で、財源確保のために保険料アップや要介護認定の改正が考えられます。加えて、保険者の対象年齢引き下げ(20歳からなど)や障害領域に対応した支援費制度との統合などによって財源確保をというわけです。65歳以前から障害と向き合って生活をしてきた人たちも、65歳以上になると原則介護保険に組み込まれています。保険料未払い分による赤字という課題、保険料の増額、自己負担増、被保険者の負担、国庫補助負担(税金)、雇用者負担の保険料など、財源確保の課題は幅広い内容を含んでいるといえます。 支援費制度がもたらしたもの 新しい障害者プランでは、障害のある人の地域での生活を支援する制度として、何といっても、利用者主体のサービス選択が可能な利用制度という理念によって、支援費制度は注目されました。支援費制度によって、とくに居宅生活支援費(グループホーム、デイサービス、ショートステイ、ホームヘルプ〔ガイドヘルプ含む〕)は、これまで利用できなかった児童期の人たち、グループホームを利用している人にとってホームヘルプサービスの活用で障害の重いといわれる人への地域生活の可能性が期待されます。施設訓練等支援費が全体の84%、居宅生活支援費が14%という配分をもつ支援費制度をめぐっては、試行前から、ホームヘルプサービスの上限論議や相談事業が重要といわれながらの一般財源化など、先行して財源課題が論議されてきました。2003年5月から「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」では、財源論だけでなく地域生活支援を論議しようと設置されたのですが、改めて介護保険との統合課題が提案されているのです。 これから 介護保険と支援費制度の統合の課題について、利用者、事業者、地方行政と、立場で見方も違ってくるでしょう。背景にどのような状況があるのか概観してみました。制度の利用率が上がったということは、それを必要としている人たちが、そこに居るということではないでしょうか。自分の生活基盤をもとに生活を支援する仕組みとしての支援費制度の必要性を明らかにできるのは当事者です。どのように確立していったらいいのか、財源論だけに収斂することなく、「時間がない」という以前に、自立支援と介護負担軽減という課題を幅広く論議しておく必要があるのではないでしょうか。 |
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