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今こそ ゆっくり楽しく学び直しましょう。
数学・物理の世界には面白いことがいっぱいです。

身近な物理「川はなぜ曲がりくねって流れようとするのか? − それは紅茶をかきまぜると細かい葉がティーカップの底の中央に集まってくるから・・・?」という謎めいた表題を順々に解き明かしてゆく授業風景。(写真上)

第5期平日大人・やさしい数学物理クラス(水曜午後1時10分ー3時) 開講準備・受講者受付中

第5期大人・「やさしい数学物理クラス」を開講準備中です。高校数学と物理を教科書と新刊テキスト「自然のふしぎを解き明かそう」を使いながら、楽しみながらゆっくりと学習してゆきます。受講者として主に文科系出身の家庭婦人を想定しています


第4期大人数学クラス(土曜午後3時10分ー5時) 受講者随時受付

平成23年2月に開講した第4期大人数学クラスは数T、数Aから数V、数Cまで3年弱で学習し、引き続き大学教養課程の数学(解析学・線形代数:隔週)にへ進む予定です。平成24年2月現在、数T・数A・数Uを終了し、数B「数列」を学習しています。3期生はすべて社会人(現在、男性3名)です。



第3期大人数学物理クラス(土曜午前10時10分ー12時) 
受講者随時受付

平成21年1月に開講した第3期大人数学クラスは、平成23年8月高校数学を修了し、現在高校物理を履修しています。約1年半かけて終了し、その後、第4期大人クラスに合流して大学教養課程の数学(解析学・線形代数:隔週)に入る予定です。3期生はすべて社会人(現在、男性1名)です。


第2期大人数学クラス(日曜午前10時10分ー12時) 受講者随時受付

平成19年1月に開講した第2期大人数学・物理クラスは、平成21年8月より大学教養課程の数学解析学・線形代数:隔週・テキストは三村征雄著「大学演習微分積分学」(裳華房)とE.クライツィグ著「線形代数とベクトル解析」(培風館))に入り、2年で修了しました。平成23年9月より常微分方程式論と複素関数論を学習しています。テキストはE.クライツィグ著「常微分方程式」と同「複素関数論」(培風館)です。1期生(上の写真)はすべて家庭女性でしたが、2期生(トップページの写真左から2番目)はすべて社会人(現在、女性1名・男性2名)です。


実務数学クラス: 統計学・経済学・金融工学の基礎数学(開講準備中)

日本の大学では文系に分類されるけれども実際には数学力を要求される経済学・統計学そして金融工学の基礎数学クラスを開講準備中。現在のところ、受講希望者が定数に達しないため、上記「大人クラス」で学習していただいています。


1)集合と論証 → 高校数学A
   和集合、共通部分、差集合、補集合、ド・モルガンの法則
   命題、条件、推論
2)数列と級数 → 高校数学B・V
   等差数列、等比数列、階差数列、数列の和・級数、漸化式、数列の極限
3)関数と写像 → 高校数学T・U・V+α
   関数の方程式とグラフ、逆関数、合成関数、集合関数と測度
4)線形代数 → 大人クラス(線形代数)
   ベクトルの演算、内積、一次独立と一次従属、ノルム
   行列の演算、逆行列、対称行列、対角行列、エルミート行列、直交行列、
   ユニタリ行列、行列式、ベキ零行列、正規行列、階数、射影、三角行列、
   連立一次方程式の解法、ベクトル空間、シュミットの直交化法、
   固有値と固有ベクトル、2次形式、行列の標準化
5)1変数の微積分 → 大人クラス(解析)
   関数の極限、テイラー展開、ガンマ関数、誤差関数、
6)多変数関数の微積分 → 大人クラス(解析)
   偏微分と全微分、線積分と面積分・多重積分、広義積分   
7)微分方程式 
   常微分方程式(線形・非線形)、偏微分方程式(楕円型・放物型・双曲型)
8)確率分布 → 高校数学C+α  
   離散分布と連続分布、正規分布、二項分布、ポアッソン分布、負の二項分布、 統計量
9)最適化 → 大人クラス(第2期)
   関数の極大と極小、条件付極値問題、線形計画法

MBA準備講座:数学を英語で学ぶ (開講準備中)

主にアメリカの大学院に留学してMBA(Master in business administration)を取得する社会人がふえてきました。留学する人のほとんどは文科系の大学出身者なので、留学した後最も苦労するのが、経済学・統計学・金融工学の中に頻出するかなり高度な数学の学習です。(「経済学・統計学・金融工学の基礎数学」参照)
しかも講義は英語ですから、数学の内容自体を理解する能力を持つと同時にその数学を表現する英語を理解する必要があります。
そこで、本講座では「経済学・統計学・金融工学の基礎数学」を英語で講義し、留学までに英語による数学の講義に慣れるようにします。
同時に簡単な発表の練習もして、発音イントネーションなど会話の基本練習も行います。

講座終了までに例えば次のような言い回しに精通することを目指します。

Let f(x) be a real function of the real variable x in the closed interval [a,b].
Obtain a necessary and sufficient condition that Q(x,y) be positive definite.
It follows that Q(x,y) be positive definite for all nontrivial x and y.
Eliminating x and y from these equations we see that λ satisfies the determinantal equation.

各種資格試験、就職試験、あるいは研究の基礎など固有の目的のために数学の勉強をされたい方には、特別に個別授業を行います。


高校の数学ーーー数学を楽しく

中学高校と進むうちにいつのまにか数学が分からなくなってしまったあなた、SF小説を読んだ折などに「もう一度数学を勉強し直したいなあ」と思うけれども適当な場が見つからなかったあなた、そんな大人の方達のための楽しく学ぶ数学教室です。
数学は難しくいえば論理の積み重ねですから、どこかの段階で分からなくなってしまうとそのまま挽回不能になってしまう場合が多いのです。その原因は、あなた自身の努力不足かもしれないし、中学高校時代にたまたま出会ったたった一人の先生の教え方がまずかったせいかもしれません。しかし、数学学習に一度つまずいたが最後、数学を一生諦めなくてはならないというのではあまりに「不条理」すぎるのではないでしょうか?
戸塚理数塾は中学から高校レベルの数学を勉強する少人数教室です。ここでは、中学高校の教室のように文部省の学習教育要領が定める一本のレールの上をわき目もふらず突き進むのではなく、心に余裕を持ち、いやならば練習問題はすべてとばし、数学の楽しく美味しいところだけをつまみ食いすることも可能です。

身近な物理

物理を正式に学習するためには、その道具としての数学の学習がある程度進むまで待たなくてはなりません。戸塚理数塾では数学の習熟を待たずに、次のような身近な物理現象を易しく解き明かしつつ、物理学の原理を理解してゆきます。
現在、以下のような内容でテキストを執筆中です。


「夕焼けは青空のぬけがら・・・意外に親しみやすい物理」 目次(案)

第1章 はじめに
1-1) 夕焼けは青空のぬけがら

第2章 自然界の物理
2-1) どの浜でも波は海岸線に向かって垂直に入ってくる。
2-2) 地震波に「狙われる」地域・地震波を「ためこむ」地域
2-3) 登山すると太陽に近づくのに気温は下がる。
2-4) 川はまっすぐ流れることが出来ない。
2-5)湖面を風が吹くと湖心では風上への流れが生ずる。(吹送流)
2-6)太平洋の赤道付近で深海から海面に湧き昇る流れとエルニーニョ
2-7)虹の形と現れる位置
2-8)地球の余命、そして人類の・・・

第3章 暮らしの中の物理
3-1) ラッシュアワーのバスはダンゴ状態でやってくる。
3-2) 電子レンジで加熱すると内側から暖まる。
3-3) コンタクトレンズのまことに素直な乱視矯正法
3-4) 掃除をサボると、ほこりは部屋の隅やものかげにたまる。
3-5) 美しく色づくシャボン玉
3-6) 救急車が通過するとサイレンの音程が急に下がる。
3-7) 静電気はなぜ起こる?
3-8) 環境にやさしい家・暮らし

第4章 気象・天候の物理
4-1) 冬の季節風が日本の中央を走る山脈に「ぶつかる」と雪が降る?
 付1)湯気と水蒸気
 付2)風があると洗濯物がよく乾く
4-2) 風は高気圧から低気圧に向かって吹くのではない。
4-3) フェーン現象と打ち水
4-4)「平年」は異常年 
4-5) 検証:地球温暖化は本当に起きるのか?


理数系の余談−数学・物理の周辺にひそむ面白い話題を享しむ

折にふれ、数学や物理に関連した余談をお話しします。たとえば

(1)我々は大きい数を正確に理解できていない。

買物のおつりが50円少ないと目くじらを立てる我々も、国家予算が50兆円や500兆円と聞いた時にはその違いがピンとは来ないものです。
室町から江戸時代のお話の中に、連歌師が「連歌一日一万首の修行をした」という記述が出てきますが、それを聞いてあなたは「すごいなあ」と感心しますか? これをすぐ「不可能だ」と直感する人は少ないでしょう。一日はずいぶん長いような気がするのですが、実は秒になおすと86,400秒にしかなりません。連歌一日一万首が不可能であることは明らかですね。一年も3000万秒ほどで、一生を八十年とするとたったの25億秒です。案外少ないですね。
二倍、四倍、八倍とふえてゆく累乗の大きくなる速さも我々の想像を絶しています。新聞紙を二つ折にし、それを又二つ折にする(このとき四枚に折れています)という作業を二十七回繰り返したとすると新聞紙の厚さはどれほどになるでしょう? 因みに新聞紙十二枚の厚さが1ミリだそうです。なんと答は1万1千メートルで、あのエヴェレストより高くなるのです。
つきあっていた彼(女)に不幸にも飽きてしまった場合、スパッと別れるのは難しいものです。でも累乗の大きくなる速さを知った貴女(方)は彼(女)にこう囁くかもしれません。「次は一週間後に会いましょう。でその次はそれから二週間後というふうに倍倍にしてゆくわけ」何も知らない相手はのんきに「それも新鮮でいいかもね」などと答えるでしょう。こうして貴女(方)が六回目に会うときには十六週(四ヶ月)に間延びして、鈍感な相手もさすがに貴女(方)の意図に気づくことになります。
大きな数を理解できていない、とすればその逆数である小さな数も理解できていないことになります。キャッシュカードの暗証番号は4桁の整数ですから10000通りあるので、万一これを紛失しても拾った人が暗証番号を3回間違えて入力すればそこでカードは無効になるから安全である、という説明を銀行はしています。つまり3/10000というのはまず「起こることのない」部類の確率だと皆さん納得しているわけです。では大勢のキャッシュカード保有者がなぜ宝くじを買うのでしょう? 一等の当たる確率は、キャッシュカードの暗証番号を当てられてしまう確率のさらに1/1000か1/10000しかないのに。

(2)1ひく1はマイナス1?(マイナスの運用にはご注意)

子供のころ一家総出の大きな買物には、何も店のなかった横浜駅を素通りし市電で伊勢佐木町に向かったものです。当時横浜のデパートといえば伊勢佐木町の野沢屋だけだったからです。
「アアでもない。コウでもない」と洋服、靴などを見繕うのにひっぱり回された私たち兄弟がいいかげん我慢できなくなると、両親は屋上のブランコに毛が生えたような遊戯施設でわれわれに気晴らしをさせ、一階下の食堂で昼食となりました。
最後に食料品を買いにエレベータで地下一階へ向かいます。三階、二階、一階、ギュウギュウづめの大人の肩越しにダイダイ色のランプが点滅してゆきます。そして地下一階。そのとき、私は、三十三間堂に並ぶ仏像の最後の一体だけが逆立ちしてアカンベをしているのと目があってしまったような、居心地の悪い感覚に襲われたのを覚えています。
エレベータが一階昇るごとに階が一つずつふえ、逆に、下りのエレベータでは一階下るごとに階が一つずつ減ってゆく。ところが、一階からさらにもう一階下ると、突然地下一階になってしまったのです。地下一階というのはいわばマイナス一階でしょう。つまり、1ひく1がー1になってしまったのです。
これは逆向きの量を安易にマイナスとすると不都合が生ずるという例です。西暦の紀元前 x 年の年号を単にーx 年とすると同じ問題が起こります。つまり、紀元前 x 年から紀元 y 年までは、y-(-x) = x+y 年ではなく x+y-1 年なのです。

(3) 逆転の発想(やわらかいバット)

飛距離が数十メートルアップする、という触れ込みで軟式野球の新型バットが出回っています。従来の金属バットは1万円程度ですが新型バットは2万5千円もします。ではどう性能がよくなったのでしょう? なんと金属バットの外側に指で圧せばへこむほどにやわらかいラバー(ゴム)が貼ってあるのです。
飛距離アップといえばゴルフのチタンクラブを耳にします。これは(あまり詳しくはありませんが)クラブ面とゴルフボールの反撥力を強くしたものでしょう。強く叩けば遠くまで飛ぶ、分かりやすい話です。バットの外側にラバーを貼れば当然軟球を叩く反撥力は小さくなってしまいます。ではなぜ飛距離がアップするのでしょう?
この新型バットを開発した人は、力学の根本原理をうまく利用したのです。ニュートンの力学の基本法則は、「物体に働く力 F はその物体の加速度(速度v の時間変化率v/t)と質量(重量)m の積である」ことを教えています。
    m ・v/t=F  (1)
これを書き直すと
    v=F・t / m  (2)
となります。
投手の投げる球の速さ、たとえば(打者から投手に向かう方向を+にとることにして)ー100km/時間であったのがバットを離れるとき+150km/時間になっていたとすると、この速度v の全変化分は
   v=+250km/時間
となります。さて(2)式をよく見るとvF だけでなく、バットと軟球の接触時間t にも比例しています。
新型バットはバット面にラバーを貼ることにより、反撥力 F はやや小さくなるもののそれ以上に接触時間t を長くすることができたものと考えることができます。拍手したくなりますね。

(4) 女の赤ちゃんの名前

 真昼でも零下二〇度以上に気温があがらないことが何日もつづき、川は凍りついた。内陸から吹きつける強い季節風に逆らってアパートにもどる夕方には、羽毛のたっぷり入ったクゥイルティングのフードとマフラーを強く押さえていないと凍えてしまいそうだった。厳しいボストンの冬がやっと過ぎさって、明るいタンポポが野原一面にちりばめられたころ、妻が懐妊した。
 産婦人科医は、妻のおなかに超音波をあて、私を手招きした。ブラウン管の画面の中では、衛星写真の雲のようなマダラ模様をした胎児が、からだ全体を一つのポンプにして、一所懸命、血液を送り出していた。この段階で、医者はすでに胎児の性別がわかるのだ。「女の子ですよ」。
 子供の命名をおおせつかる。誕生までという期限つきの、親としての大事な初仕事だ。私はまだカブト虫の幼虫のようにうごめいているだけの娘のために心に誓った。
「特別あつらえの名前を考え出してやるよ」。
 大正のころから長きにわたり、女子の名といえば「・・子」のオン・パレィドだったらしい。それが、戦後しばらくして徐々に変化のきざしが見えてきた。「子ぬき」女子名の再現である。ヨシエ、ヒロミ、ナミエ、ユカリ、ミカ、リエ、サヤカ、ジュリ・・・なかなか可愛らしいのが多くなった。新味もある。だが、この名前のまま老境に達したとき、例えば、ジュリバアサンという呼称がピンとくるかどうか。それに、このタイプの「子ぬき」名は、案外、短期的な流行にすぎないかもしれない。そこで、私は、自分に一つのテーマを課すことにした。伝統的な「・・子」という形式を維持したままで、何か斬新な名前を考えることにしよう。
 私の母の名は和貴子という。最近、女優にこの名を使ったものが現れてしまったが、ユニークなよい名だと感心していた。これは、聖徳太子の一七条憲法からとったものだ。そこで、私もまず古典をいくつか読み返してみることにした。論語、平家物語、徒然草・・。しかし、なかなか、漢字のよい組み合わせに出会わなかった。
 そろそろ、古典の方はあきらめかけたころ、ふと気がついた。
「陽子、光子という字をみて、人は何と読むだろうか?」 大半の人は、ヨウコ、ミツコにちがいない。しかし、量子力学の脈絡の中にでてきたとしたら、これらの言葉は、それぞれ原子核の構成粒子であるヨウシであり、光の量子であるコウシとなる。つまり、女子と素粒子の名前には共通するものがあったのだ。
「そうだ! 素粒子の名をかりれば、『・・子』という形式で、しかも革新的な女子の名前を創り出すことができる」。
 素粒子(ソリュコ)。いまいちかな。中性子(チュウセイコ)。これでは、女の子らしくないか? 電子(デンコ)。新鮮だ。ウーン、しかし、鉄腕アトムの姪っ子みたいか? では、湯川秀樹博士が予言して、後に宇宙線の中から発見された中間子(チュマコ)はどうか? ウン、これはいけるかもしれない。日本人のプライドをくすぐる名前だし。それとも、地球すら貫通することのできる中性微子(チュウセイビコ)は? なかなか微力的、いや、魅力的ではないか? あるいは単に微子(ビコ)ちゃんというのもかわいいかもしれない。電子の反粒子である陽電子(ヨウデンコ)は、電気で明るい陽子ちゃんていう感じすらする。
 ああ、「斬新な」名前は無尽蔵だ。

 どれにしようかと決めかねていると、出産のため帰国していた妻の実家から国際電話がはいった。
「うまれましたよ。男の子ですよ」。
 機械の判定にはミスはつきものだったのだ。

(5) 不老永寿

 あたま・うで・はら・あし・・・・・、鏡の中の自分のからだをあらためて見まわしてみる。万一、身体のどこかで切断され二つに分かれてしまったら、そのどちらが自分本体ということになるのだろうか。髪やつめは切っても痛くないし生えかわるから問題外。それらと違い、手足は再生することのできない大事な器官だが、もし胴から離れてしまえばやはり残った方が「私本体」だろう。生命を維持するのに不可欠な心臓・肺はどうか? 今日これらも人工心肺と取り替えることが可能になった。結局、体のどの器官にしても、それが自分の本体ということにはならない。つきつめると、ヒトの本体、というより本質は、個人に固有の遺伝情報であるDNA配列と、知識・思想など個々人が後天的に取得・蓄積した脳内情報だけということになるらしい。
 このうちDNA配列の全く等しいクローン人間の製造技術はすでに確立された。あとはちょうどコンピュータ間でデータを瞬時にコピーするように、ヒトの脳に蓄積された情報をクローン人間の脳にコピーする技術さえ完成すれば、ヒトはその本質・アイデンティティを失うことなく若い肉体に乗り移ることができる。つまり、個々人が半永久的に生き続けることができるようになる。千二百歳を超えるはずの弘法大師が、今日も高野山の奥深い庵に毎日三食の世話をうけつつ生き延びている、という話が現実感を帯びてくる。
 ヒトは不治の病に罹ったことを知ると、その脳に蓄えられたすべての情報をずっと若いクローン人間の脳にコピーしてクローン人間に乗り移ることによりたちまち若返る。交通事故の場合は間に合わない? 心配するなかれ。不時に備え「情報銀行」に個々人の脳内情報を一週間おきに更新・保存しておく。「遺族」がそこから預金ならぬ「預情報」を引き出してクローン人間にコピーすれば、「故人」は簡単に再生する。生命保険会社は本来の役目を終え、疾病・傷害保険のみが「クローン人間製造保険」と名をかえて存続する。 かくしてヒトは種の保存のために夫婦を形成し、親と似て非なる第三者・子供を再生産するという有性生殖をする必要がなくなる。「一年中、発情期だ」とケダモノさまに蔑まれてきたヒト属は、一旦自分のクローン人間の胚芽細胞を冷凍保存したら全員避妊手術を受け、性欲の煩悩から解放される。性犯罪は皆無になり、女性は化粧から解放される。取得した知識を墓場に捨てることもなく、子供に一から教え直す必要もなくなる。 
 めでたし。めでたし・・・。ただ、何も知らされずに育てられ、突然やってくる「運命の日」にそれまで自分自身で蓄積した脳内情報を一挙に消し去られた上に、一卵性双生児の兄弟のようなものとはいえ全くの別人にのっとられてしまうクローン人間は哀れというほかないが。

(6) 和算

 マサチューセッツ工科大学数学科のロビーの壁に、縦二センチ横一五センチほどの重厚な銀白色のネームプレートが、ざっと一〇〇枚ほどびっしりとはめこまれていた。世界史に残る数学界の巨人たちである。そのとき私は、ニュートン、ライブニッツ、デカルト、コーシー、リーマン、カントール、ポアンカレなど、西欧の大数学者たちの中に、一人の日本人の名前を見つけた。
 関孝和。外国との窓口が狭まり、浮世絵、俳諧を始め日本独特の文化が花開いた江戸時代、やはり日本で固有の発展をとげた「和算」と呼ばれる数学の代表的な研究者だった。和算には、そろばん算法を始め、面積や体積、円周率の計算法とさまざまな分野が含まれている。日本という孤島の中で、それらを独自に編み出したわが先人たちを、私は誇らしく思う。
 西欧の数学の方は、紀元前の古代ギリシア時代に驚異的な発達を遂げたあと、なんと二千年近く停滞したままだったのだが、やはり一六世紀に入ると、科学技術の発展に刺激され、前記の大数学者たちによりすさまじい勢いで再び発達を始めた。
代数・幾何・解析・微分積分論と段階をふんで学んでゆく、西欧数学が日本に輸入された明治時代以降、その簡便さ、明快さゆえ、和算はほとんど駆逐されてしまった。今、わずかに残っているのが、小学校で受験生が勉強する、鶴亀算、旅人算、流水算、和差算等々の独特の計算法だ。
 気楽な酒の席で意見を求めたとき、東大の法科を卒業したあるエリート銀行マンは、これらの計算法は頭の訓練としてとてもよかった、と述懐していた。たしかに、鶴亀算、旅人算など、それぞれに独特の解法を駆使して問題を解き上げることができると、心地よい達成感を得ることができる。それに、日本人が日本固有の文化である和算を学習すること自体、有意義であると認めるべきだろう。
しかし、和算は、数学が不得手な小学生には苦痛な訓練だ。なにより、和算の学習は中学以降の数学のために何の役にも立たない。代数では、分からない数をx、y ・・と置いて、問題文をすなおに数式に書き下せば、鶴亀算、旅人算・・などのように、問題ごとに独特の解法を駆使する必要もなく、統一した方法で和算と同じ問題を解くことができる。
つまり、和算は今の中等数学の基礎になっておらず、小学生にとり、日本数学史の一コマとしての意味しか持っていない。結局、現在の中学受験勉強では、その和算に一年近い時間を費やしたあげく、かなりの数の算数きらいを生み出していることになる。
 西欧の数学者が一目おくような数学体系を独自に作り上げた関孝和がこの実情を知ったら、どんな感慨をもつことだろう。

英語には自信があるというグループには

数学はともかく英語には自信がある、という方々は、Morris Kline ”Mathematics for the nonmathematician” (Dover Publications Inc. NY, 1967)をテキストとして、「なぜ数学なのか?」「数学の歴史」など、学校の数学とは別の観点から数学を学ぶこともできます。

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