タイトル 夜明け前より瑠璃色な
発売元 オーガスト
発売日 2005.09.22

オーガストの完全新作としては四作目。
前作「はにはに」が大ブレイクしただけに注目度は非常に高く、
オーガストの今後を占う作品と言っても過言ではないかと思います。

■システム

オーガストは今回、それまで使っていた「NScripter」から構築システムを変更。
結果、インターフェイス周り…特にオートモード・スキップに関しての微調整が可能になり、
ユーザービリティが僅かですが向上した様に思えます。

私が重要視する「ロード直後の音声再生」は、システムを変更した事によって実現。
「最新のテキストがログに表示されるか」という点についても問題ありませんでした。
そして、無いと不便かもしれない「1ボタンで音声リピート再生」もしっかり実現。
ホントにインターフェイス周りの仕様に関しては特に問題ないと思います。

褒めるだけでは何なので提案の様なものを。

一周目はフィーナルートで固定されていますが、
どうせ固定なら選択肢を全部取っ払っちゃっても良かったんじゃないかな、と。
なまじ選択肢があるので、一周目がフィーナルート固定という事に気がつかない人が
少なからずいらっしゃった様ですし。

二つ目は非常に個人的な希望なのですが、
日付表示の直後にセーブをし、そのデータをロードした場合、
日付表示の演出から再開される
…という風になると非の打ち所が無い位完璧なんですけど(苦笑
代表的な例としては…「こみっくパーティ」における、こみパ開催中セーブですね。
同人誌の価格を設定する所でセーブできますが、
そのデータをロードするとこみパ開催のところから再開される…というのを日付表示で是非再現して欲しいな、と。
まあホントに個人的な願望なんですけど。

最後に、ルートに突入した場合、
日付表示の際にSDキャラを表示させるとか薄くキャラを表示させるなりして、
ルートに突入したと分かる様な効果を入れておく
…とか。
日付表示の白い部分が広くてちょっと寂しいかな、と思ったので。

色々と書いてますが、システム的にはホントに不満はないです。
上に挙げた提案の二つ目と三つ目はあってもなくても特に問題ないものばかりですし…。

■CG

毎回チェックしている「立ち絵とイベントCGのクオリティーの差」
オーガストは過去の作品について、この点は問題ありませんでした。
「夜明けな」についても同様で、特にクオリティーの差を感じる様な所は無かったかと。
あ、「はにはに」では保奈美の冬春私服がイマイチでしたが(苦笑)、
「夜明けな」では特にそういったことは無くて良かったです。

CGで特に注目したいのは、「菜月とのキスシーン」ですね。
オーガストとしては非常に珍しい、正面ではなくサイドから見た構図というのもありますが、
月光を受けて白く光っている様子が非常に綺麗に表現できていてるんじゃないでしょうか。

カットイン演出はフィーナルートのトラットリア左門制服が秀逸でしたね。
演出については構築システム移行第一作目という事もありますので、
次回作以降に多彩な演出が拝める様になるでしょう。

■音楽

今までの作品の主題歌は作風にリンクした明るい曲調のものが多かったので、
発売前に公開された「Lapis Lazuli」を聴いた時は衝撃を覚えました。
曲調から作品の方向性がかなりシリアス…つまりシナリオ重視である事を示唆していますし、
曲そのものも非常に綺麗な良い曲だと思いました。
その後かなりの期間、これが主題歌だと勘違いしていたんですけど(苦笑)

キャラ別テーマ曲はないのかな…と思ってたら、
音楽鑑賞モードの「蒼月のティアラ」から順に、フィーナ・ミア・麻衣・菜月・さやか・リースの順番…でしょうか。

個別BGMも良い曲が沢山ありますね。
「…no more」「遥かなる奏曲」「String of restraint」「掌に」「天海の鼓動 〜オルビス・ラクテウス〜」などなど…。
早くサントラ発売されないかなー。

■シナリオ

クリアした順番に書いていきます。

●フィーナ・ファム・アーシュライト

嫁さんの実家は38万キロ彼方。

個人的な推測(邪推)なんですが、
「ヒロインの復権」というのがテーマの一つとしてあった様な気がします。
前作「はにはに」のメインヒロイン、美琴の人気投票の順位は屈辱の4位。
初のアニメ化を実現しながらも、テレビ放映版はサブヒロインの保奈美エンドでしたし…。

まあそれはさておき、
作品中に「姫」が登場するのは今回で二回目になります。
一回目は「プリホリ」のレティシアでしたが、こちらは「姫っぽくない姫」というコンセプト。
今回はその真逆、「どんな時でも姫らしい姫」というコンセプト。
その割にダイニングテーブルの下で蹴り合いをする茶目っ気があったり、
箸で豆を皿から皿に移す特訓をする程の負けず嫌いだったり、
普段は凛として国民を率いるカリスマを持ちながら健気なところがあったり、と何かキャラの設定勝ちな気がします(苦笑)

シナリオ自体はファーストプレイという事もあって、非常に楽しめたと思います。
展開の矛盾についても特に感じるところは無かったかなあ…。
シナリオの尺も私は問題ないと思っています。

最後の剣術の展開については「勝たなくても良い」という所は誰でも予想できる筈。
ただ、「予想できるから面白くない」というのはちょっと違うんじゃないかなあ、と。
展開が簡単に読めてしまうというのは、それがいわゆる「お約束」であるからなのですが、
「その『お約束』にどうやって持っていくのか」という展開を楽しむべきだと思うんですよ。
フィーナシナリオはその持っていき方が絶妙で、そこに面白さというか爽快感みたいなものを感じました。

●鷹見沢 菜月

「幼なじみと遠距離恋愛する」という展開に新鮮さを感じるのは私だけでしょうか。

その他の展開には特に目立った点もなく、
「幼なじみ」というテーマを扱うにあたって卒のない展開だったんじゃないかと思います。
何というか…キャラ設定にシナリオが乗っかっている様な感じ、かと。

ただ思うのは、「親友が主人公に告白する」とか「幼なじみが遠くに引っ越す」とか、
それだけで一本分ストーリーが書けそうな設定をちょっとずつ使っているという点が、
逆に物語に対して高低差を作らない結果となって、
目立った点がない…つまり物語に厚みが無い様な感じになってしまっているのかも。

●ミア・クレメンティス

ミアシナリオなんだけど、フィーナの健気さに感動しました。

フィーナと根本的な格の違いはあるものの、
「いずれ月に戻ってしまう人との恋愛」がテーマ…の筈なんですが…。

シナリオ最大の山場はミアがフィーナを叱咤する所なんですが、
私は寧ろその先、フィーナがミアに別れを告げる所の方に感動してしまいました。
何かフィーナに入れ込んだせいでミアが霞んでしまった様な気がします。

●穂積 さやか

勿体無ぇ…。

全てのシナリオを消化してから思う事は、
さやかさんは元々サブヒロインじゃなくて、
サブキャラからサブヒロインに昇格したんじゃないかという事。

というのも、フィーナや麻衣シナリオにおける名サブキャラっぷりの方が印象に強くて、
さやかさんのシナリオにおいて特に目立った所が無い様な気がするんですよ。
それでも「相続税」っていうエロゲと縁が無さそうな単語が出てきた時には非常に吃驚しましたが、
特に物語に深く関わってくる事もなくて少し残念です。
個人的にはこの辺をもっと掘り下げれば面白いシナリオができたんじゃないかと思うんですけど…。

●朝霧 麻衣

おう、えろえろよー。

シナリオ云々なんて良いじゃないか(ぇー
これでオーガストは「義妹はエロい」というフォーマットを確立しました。
今後の義妹キャラに注目です。

…これだけだと麻衣ファンに怒られますね(苦笑

さやかに二人の関係を告白するまでの展開は悪くないと思います。
一応元祖健気キャラですしね。
ただ、二人の関係を告白してからの展開のメインが麻衣じゃなくてさやかになっている様な…。
展開的に仕方ないのかもしれませんが、もうちょっと巧く料理できたんじゃないかとも。
そうですね…一旦別れるとか。

●リースリット・ノエル

「夜明け前より瑠璃色な」へ向けての布石。

外見の割に結構設定がヘビーなのに少し驚きましたが、
他のキャラよりも尺は短めですし、終わり方も一線を画しています。
まあリースはさやか以上に「サブキャラ的なサブヒロイン」の意味合いが大きいので当然なのかも。

●夜明け前より瑠璃色な

ありがとう、オーガスト。

それまで使われる事のなかった達哉の父親やフィーナの母親の伏線、遺跡調査とリースリットの関係。
そういったものがシナリオを進めていくうちに一つの線になっていくのは爽快でした。
特に遺跡に辿りつくまでの下りはもう震え…いや、奮えが止まりませんでしたよ。
これぞ正に展開燃え。

最初のフィーナでも書いてますが、
個人的に「読める展開」というのは減点対象になりませんし、
プレイしている最中に色々展開を予想する様な事はしない様にしています。
色々と邪推してしまうと面白さを半減させてしまいますし、
何より私はサッサと読み進めてしまうタイプなので予想するヒマがないというのが真実だったり。

最後のフィーナの独壇場は、それこそ究極の「姫らしい姫」という演出に相応しい展開。
それまでに歩んできた様々な展開を踏まえて発せられる言葉には説得力がありますし、
読み手にも好感を与える良い表現方法ではないでしょうか。
個人的には「打ち倒すか従属するか友人になるか」の下りが最高に奮えましたが(笑

■総合

「フィーナシナリオの凄さ」に尽きる作品だと思います。
フィーナはシナリオに加えキャラ設定なども秀逸なのですが、
他のキャラはどちらかというとキャラ設定が秀逸でシナリオに目立った点がない…様な気がします。
フィーナシナリオが良過ぎて他のキャラのシナリオが霞んでいる様な感じです。
このレビューを書いててもそんな感じですし…。
ただ、キャラ設定は全然悪くないのでその辺で助かってるといったところではないでしょうか。

総合的な評価は… 9/10 ですね。
フィーナシナリオだけなら10/10を付けても良い位なんですが。

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