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 ちび(通称ちぃこ)の物語

 「動物を飼う」ということについて、もう一度考えてみませんか?

★ 以下の文章は、主に2004年秋に書いたものです(2005年に一部加筆)。
文中に登場する「ぽちくん」は2006年3月14日に永眠いたしましたが、
内容はあえて変更していません。ご了承の上、お読みいただければ幸いです。


afrui00.gif 初めに

現在、私が同居している動物は犬2匹です。先住の子は「ぽちくん」で、前のページで既にご紹介しています。トップページにも写真を掲載していますので、ぜひごらんください。きちんと「あごのせ」している姿が愛らしいでしょ?(笑) この子がうちに来て間もなく丸4年になります。
そしてもう1匹が、ここで取り上げている「ちびちゃん(通称ちぃこ)」です。この子はうちに来て、やっと1年が経過したばかりです(2005年9月現在)。といっても、2匹とも子犬だとか、年が若いというわけではなく、ぽちくんは推定年齢十数才、ちびちゃんは9〜10才ぐらいと思われますので、どちらも立派なじじ・ばばです(笑)。

2匹の前歴を明かせば、ぽちくんは2001年11月に、うちの近所をうろうろしていた迷い犬を保護した子で、ちびちゃんはご近所で飼われていた子でした。ぽちくんはともかく、何で飼い犬のちびちゃんを……と思われるかもしれませんが、余りいい飼われ方をされておらず、見かねて引き取った、というのが本当のところです。

以下、ちびちゃんを引き取ることになったいきさつについて触れたいと思います。そして、「空前のペットブーム」といわれながら、人間に飼育される動物がほんとに幸せな状況にあるのかどうか、もう一度考えていただくきっかけにしていただければ……と、切に願っています。


afrui00.gif ちびちゃんの存在

ちびちゃんの存在が気になるようになったのは、ほんとに最近のことでした。
もう8才以上になるわけですから、同じお宅でず〜っと以前から飼われていたはずなんですが、迷い犬の「ぽちくん」を保護するまでは、「ご近所のちびちゃん」の存在を気にかけることはほとんどありませんでした。
ぽちくんがうちの子になって以来、犬の生態について最低限のことは勉強しなくちゃならない!と考え、関連の本を読んだり、ネットで検索したり、お世話になっていた獣医先生(ハムスターやジリスを飼育していたため、以前からかかりつけの先生がいたので)にあれこれ相談したりしました。
そうやって情報を集めていくうちに、ちびちゃんの置かれている状態がすごく気になり始めたわけです。

彼女(ちびは女の子です)はいつも、ガレージのすみっこに置かれている犬小屋につなぎっ放しで、周囲には彼女自身の排せつ物がてんこ盛り、という状態が当たり前でした。
犬の生態を勉強して学んだことなんですが、犬は本来、食事をしたり、眠ったりする場所では排せつしないそうです。また、オオカミを先祖とするため、ねこちゃんのように単独行動はせず、群れで行動するというのが犬本来の習性です。
だとすると、自分の小屋の周囲に排せつ物がてんこ盛りになっていたり、ひとりぼっちで置かれている状態というのは、犬にとっては拷問に近いのではないか?

ちびちゃんが飼われていたおうちの前を毎日通るわけではなかったんですが、注意して様子を見てみると、彼女はいつもぼーぜんとした、ほとんど表情のない顔をしていました。私には、これがすごくこたえたんです。ぽちくんがうちの子になってわかったことですが、犬ってすごく表情豊かなんですよね! 周囲で飼われているわんちゃんたちを見ても、かわいがられ、愛されている子たちは、ほんとに生き生きとした目をして、いつ見ても幸せそうな表情をしています。ちびちゃんがぼーぜんとした表情を浮かべているのとは対照的でした。

そして、考えたんです。ちびちゃんのために、赤の他人である私ができることはないんだろうか?
以下は、ちびちゃんを引き取るまでのできごとを、時系列的にまとめたものです。

aleai04.gif2004年1月〜2月 〜まずは手なずけることから〜

よそのお宅で飼われているわんちゃんですから、余りあからさまなことはできません。でも、つなぎっ放しの状態の中で、せめて少しでもちびちゃんの気持ちが紛れることがあれば……と思い、このころから、犬用のガムやジャーキー、ビスケットなどをほぼ毎日差し入れるようになりました。

最初はちびちゃんも私に警戒心を持っていたようですが、次第に打ち解けてきたのを確認したころ、意を決して、ちびちゃんの飼い主さん(D家)に一通の手紙をしたためました。内容は、「うちのぽちくんがちびちゃんを大変気に入っていますので、ぜひお友達になっていただきたいと思っています。つきましては、毎日はムリだと思いますが、時々でもちびちゃんをぽちくんと一緒にお散歩に連れ出したいのですが、よろしいでしょうか?」というものです。
もちろん、ぽちくんがちびちゃんを気に入っているなんて大うそです。でも、「お宅の飼い方がひどいから、私がかわりにお散歩代行をしてやるんだぁ!」なんてこと、ご近所でもめごとを起こしたくない私としてはとても言えませんから、あえてぽちくんをだしに使ったわけです(笑)。
ところが、何日たってもDさん宅からのお返事はなし。ちびちゃんをお散歩に連れていく以上は敷地内に入らなければなりませんし、勝手に連れ出すのも気が引けるので、しばらくはおやつの差し入れにとどまっていました。


aleai04.gifお散歩代行を決行!

そんな状態が続き、私もとうとうしびれを切らしてしまいました。かといって、Dさん宅に再度手紙を届けるのもしつこいような気がして、私の犬友達であるTさんに仲介を頼むことにしました。Tさんの息子さんとD家の息子さんがお友達だということもあり、事情を話したところ、私が手紙を届けたことは既にご存じで、「『どうぞご勝手に』なんて言ってたわよ〜」と、笑いながら教えてくださいました。
何だか拍子抜けしてしまいましたが、とにかく先方の了解は得たものとみなし、早速ちびちゃんのお散歩代行を開始することにしました。たしか、1月の終わりか2月初めごろだったと記憶しています。

一番難しかったのは、先住のぽちくんと一緒にどう扱うか、ということでした。私自身、わんわんオーナーとしての経験が浅く、2匹のわんちゃんを上手に扱えるか不安もありましたが、とにかくやるっきゃない! あれこれ試行錯誤し、時には泣きたくなるようなこともたくさんありました。その中でも私が一番気を使ったのは、やはり「ちびちゃんにケガをさせない」ということでした。
他人のお宅のわんちゃんですから、ボランティア的にやっていることとはいえ、万が一のことがあると、もめごとの種になりかねません。また、ご近所同士ということもありましたので、いざこざを起こすようなことだけは絶対に避けたいと思っていました。
まあ、そういう苦労話は私個人のことですので(笑)、ここでは割愛しますが、簡単にご説明すると、2匹のケンカが非常に激しい時期や、逆にぽちくんが異様にちびちゃんに関心を示し、もしかして発情期なの?と思われるような時期には、時間がかかって大変でしたけれど、2匹を別々に散歩させたり、獣医さんのアドバイスも受けて、2匹が同じ群れのメンバーなんだっていう認識を早く持てるように、お外で一緒におやつを食べさせたり……。経験が浅いながら、自分なりの工夫も重ね、何とか毎日のお散歩をこなしていった、というわけです。


aleai04.gifお散歩以外にしたこと

お散歩以外にも、「こんなこと、普通は飼い主がすることだろ〜が!」と思うようなことも、いろいろやりました。

まずは排せつ物の処理。ちびちゃんが置かれている状況の中で私が一番気にしていたのは、いつも小屋の周囲にちびちゃん自身のうんちがてんこ盛りになっていたことでした。
通常、わんちゃんは、寝たり食べたりする場所では排せつしないものですから、あんなにたくさんのうんちがあるってことは、何日もお散歩に行っていないせいだな、あれじゃほとんど拷問じゃないか! そもそもそう思ったことが、私が彼女のお散歩代行に踏み切った一番大きな原因だったといってもいいと思います。
そして、お散歩に連れ出すことによって、この問題はあっさり解決しました。お散歩の途中でうんちをしたら、それをビニール袋に入れて持ち帰る。それだけのことで、ちびちゃんは「てんこ盛りのうんち」から解放されたわけです。
なお、持ち帰ったちびちゃんのうんちは、ぽちくんのうんちとは厳格に区分し(笑)、ぽちくんの分は私が自宅に持ち帰って処分しましたが、ちびちゃんの分は、多少のイヤミも込めて、Dさん宅のガレージに放置しておきました。当然でしょ? そのころはちびちゃんはうちの子じゃなかったし、飼い犬の排せつ物の処理は飼い主の義務なんですから!

2番目が、衛生状態の改善です。これもまた「てんこ盛りうんち」と関係することなんですが、はっきりいって、以前のちびちゃんはくさかった!
お散歩代行の前段階の「おやつ作戦」でかなり私になれてきたので、少しずつなでなでしたり、スキンシップをとろうとしたんですが、ちびちゃんの頭をなでた私の手がものすご〜くくさくなってしまった。さらにいうと、何となくベトベトした感じなんですよ、ちびちゃん、全体的に……。毛も薄汚れた感じがするし、いかにも「貧相な犬」って感じでした。
こんなにくさいと、さすがになでなでするのもためらわれてしまいましたが、お散歩代行するためには、さわらざるを得ません。
そこで、ペット用のウェットティッシュだとかぬれタオル、ブラシなどを購入して、ちびちゃんの毛繕いに乗り出したんです。一度にやろうとするとちびちゃんが嫌がりますし、私もちびちゃんにばかり時間をかけていられるほど暇じゃありませんから、少しずつ、手のあいているときに、ブラッシングしたり、全身をふいてやったりしました。そうすることによって、徐々に「くさい犬」の汚名を返上することができたわけです。
さらに、お散歩させることによって、ちびちゃんの周りから「てんこ盛りのうんち」が消えたことも、「くさい犬」からの脱皮には大きく寄与していたと思います。あんなものが周りにあったら、どんなにきれいにしたって、すぐにくさくなるに決まっていますから(笑)。

3番目は、ささやかなことですが、環境改善とでもいったらいいんでしょうか。
ちびちゃんの住みかである犬小屋には、1〜2月の寒空にもかかわらず、毛布やクッションなど、寒さ対策は一切なされていませんでした。そこで、推定年齢8才、決して若いとはいえない彼女に寒さはこたえるだろうと思い、古毛布を提供したんです。ところが、これを小屋の中にしいてやったのはいいのですが、横なぐりの雨がふると、ぐっしょりぬれてしまいます。そこで、雨の日の翌日にはかえの古毛布を持っていき、ぬれたものは自宅の庭で乾燥後、物置で保管し、ぬれた物とすぐに交換できるようにして、できるだけちびちゃんが快適に過ごせるように工夫しました。

こんなこと、外で犬を飼っているお宅なら、普通にやることなんじゃないでしょうか。本来、赤の他人である私がやることじゃないと思います。
ご近所の方にも、「何でそこまでやるの?」と聞かれたことがありました。
何でって言われても……。犬を飼ったご経験のある方にはわかっていただけると思いますが、私はわんちゃんがこちらをじ〜っと見つめる目に弱いんです。信頼し切ったまなざしで、ひたすらこちらを見つめてきますよね。あれを見ると、「何とかしてやらなくちゃ!」と思ってしまう。犬って、ほんのささいなことであっても、何かうれしいこと(例えばお散歩)をしてやると、生き生きとした表情をこちらに返してくれますよね。逆に、お散歩のあと、「じゃあ、もう帰るからね。ばいばい」と言ってそばを離れようとすると、生き生きと輝いていた表情が急激にぼーぜんとしたものになり、それまでくるっと巻き上げていたしっぽも、だんだんと垂れていってしまう。それを見るのはほんとにつらかったです。

赤の他人の犬に何でそこまでやるの?
その答えは、ちびちゃんの生き生きとした顔を見るのが、私自身にとってもすごくうれしいことだったから。逆に、あの子のぼーぜんとした顔を見るのがつらかったから。ただそれだけのことだったのかもしれません。
この地球上に存在するすべての動物を幸せにすることなんてできませんけれど、少なくとも、私の目の届く範囲で生活する動物には幸せに過ごしてもらいたい。そんな思いが私の中にあったんじゃないかと思います。その思いは今もかわりません。

さて、最後の1つはとても簡単なことです。どんなに忙しいお宅でも、これだけは絶対にできる!と断言できることです。1日に1回でもいいから、名前を呼んであげるなり、「大好きだよ」と言ってあげるなりして、体をなでなでしてあげる。それだけでも、犬にとってはすごくうれしいことじゃないかと思います。もっとも、以前のちびちゃんみたいにくさいと、とてもじゃないけど「体なでなで」なんかできませんけれどね(笑)。やはり、衛生状態をきちんと保つことも大切だ、ということになるんでしょうか。

ちなみに、お散歩代行をするようになってから、D家のご主人に何回か偶然お目にかかることがありましたが、その都度「いつも済みませんねぇ」とお礼を言ってくださいました。
ご主人の弁によれば、「お姉ちゃん(D家の娘、ちびの拾い主)が大きくなってからは、忙しくなっちゃって、散歩にも連れていかれなくて……」とのこと。要するに、家族一同非常に忙しいので、飼い犬の散歩すらままならないってことなんでしょうけれど、そういうお宅に犬を飼う資格はあるんでしょうか。人間の勝手な都合に振り回される犬のことを、かわいそうだとは思わなかったんでしょうか。

aleai04.gifそして、夏 〜2004年7月〜

いや〜、2004年の夏は暑かった!
人間ですらげんなりする暑さだったわけですから、全身ウールマークつきの純毛に覆われているわんちゃんは、さぞ過ごしにくかったと思います。
ぽちくんの場合、心臓に問題があることもあって、終日エアコンのきいた部屋で快適に過ごさせていましたけれど、それにひきかえ、ちびちゃんの状態が何ともあわれで……。そこで、それまでのおやつに加え、氷を持っていってやったり、保冷剤をタオルにくるんで提供したりしました。また、彼女の水入れを見ると、何日も取りかえてもらっていないようで、濁ってすごい状態になっていたこともあったので、取りかえてやったこともありました。

そして7月下旬。台風の影響で2日間ほど大雨がふったとき、ちびちゃんのことが気になって、様子を見に行ったところ、えさ入れに入っていたドライフードは水を吸ってふやけ切り、それが雨水の中にぷかぷか浮いている状態。さらに、水入れの水にはボウフラがわいていました。ふやけたドライフードでも多少は食べたのかもしれないけれど、ほとんどが残っていたようです。それも当然でしょう。おなかがすけば、そんなものでも食べたかもしれないけれど、えさがふやけ切っているってことは、それを食べようと思ったら、彼女自身がびしょぬれにならなければならなってことでもあるんですから。
この暑さの中で、ろくにえさも食べないような状態では、ちびちゃんはこの夏を越せないかもしれない……。大げさかもしれないけれど、そのときの状態を見て、私は本気でそう感じました。そして、私の中で何かがぷつっと切れてしまったのかもしれません。そのままちびちゃんを家に連れて帰りました。2004年7月31日のことでした。

aleai04.gif2004年8月

Dさん宅は、いつ人がいるんだかいないんだか、いまひとつよくわからないお宅だったこともあって、ちびちゃんを連れ帰ったときも、これまでと同様に手紙をしたためました。「当分、ちびちゃんをこちらで預からせていただけないでしょうか。もし何か不都合があれば、すぐにお返しいたしますので、ご一報ください」。大体こんな内容だったと思います。もちろん、すぐに連絡をとれるよう、こちらの電話番号も明記しました。
手紙の内容は「預からせてください」でしたが、このとき、私はちびちゃんを引き取るつもりでいたんです。勝手なことを……と思われるかもしれないけれど、あの状態にこの子を戻すことはできない! そう思っての暴挙(?)だったわけです。
そして、前回同様、このときもDさんからの返事はなし……。

8月に入って、ぽちくんがお世話になっている動物病院に連れていき、まずは、ずっと気になっていたフィラリアの検査を受けさせました。結果は陽性。つまり、既にフィラリアに罹患していたわけです。ついでにお願いした血液検査でも、やや貧血状態であるとか、白血球数が若干多いので、もしかしたら子宮等に炎症があるのかもしれないとか、幾つかの指摘を受けましたが、「推定年齢8才にしては、少し異常が多いね」というのが獣医先生の見解でした。

受診直後、再度手紙をしたためました。これまでの手紙は手書きだったんですが、このときはワードで作成しましたので、以下、その内容をコピーします。

「先週からちびちゃんをお預かりしている○○です。
ご相談ですが、もし、D様のご家族の皆様にご異存がなければ、このままちびちゃんを当方で引き取らせていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
ご了解いただけるようでしたら、保健センターで登録の名義変更等の手続きをしなければなりませんので、お手数ですが、お早目にご連絡ください。また、ご異存があれば、すぐにお返しいたします。
いずれにいたしましても、一度きちんとお話しさせていただきたいと考えております。
なお、余計なこととは思いましたが、本日、動物病院で検査を受けさせたところ、幾つか疾患も見つかっております。こちらの検査結果もお耳に入れておいたほうがよろしいかと思いますので、お忙しいこととは存じますが、早急にご連絡たまわりますよう、お願い申し上げます。」

日付は8月8日、もちろんこちらの住所と電話番号は明記しました。
ところが、これについても何ら音さたなしだったので、以前、お散歩代行するに当たって仲介していただいたTさんに相談したところ、D家の息子さんにお話ししていただき、「考え中」というお返事をいただきました。
しかし、その後、待てど暮らせどお返事なし。

一度、偶然にD家のご主人と道で会ったので、「どうなさいますか?」と聞いたことがありました。ご主人は、何となく奥歯に物が挟まったような感じで、「そうですね……。うちにいてもなかなか散歩にも連れていってやれないし、お宅でもらっていただいたほうが幸せかもしれないし……」とおっしゃるので、「とにかく、ご家族で話し合われて、お返事をお願いします」と言ったところ、「早目に連絡するように(奥さんに)話しておきます」とおっしゃったので、またも返事待ちの日々となったのでした。

aleai04.gif2004年9月

9月6日、夜8時過ぎだったと思います。
ぽち・ちびを連れて夜のお散歩をしていたときにD宅の前を通ったら、珍しく電気がついていて、ガレージに車がとまっているのが目に入りました。
こちらから訪ねるのはやや勇気が要ったけれど、これを逃すといつまでたってもらちがあかないと考え、思い切って「ピンポ〜ン」してみました。
中からD家の奥さんが出てきたので、「夜分に失礼します。ちびちゃんのことなんですが、どうなさいますか?」と話し始めたところ、「どうするってことないでしょう! 一体どういうつもりなんですか?」と詰問されてしまいました。で、すぐにドアを閉めようとするので、変だなと思ったら、どうもぽちくんが怖いらしい。「その犬、置いてきてください!」と言われたので、まずはぽちくんを自宅に連れていき、改めてちびちゃんだけをD宅に連れていって、D家の奥さんと2人、道路での話し合いが始まりました。

あちらの言い分は、「留守中に勝手に敷地内に入り込んで、無断で連れていくなんてどういうつもりなんだ」ということでした。「でも、お手紙は差し上げましたし、ご連絡いただければすぐにお返ししましたよ」と言う私に対して、「あんな紙切れ1枚で勝手なことをやるような人に、何でこっちから連絡しなくちゃいけないんです?」という返事。これにはかなりかちんときました。
「勝手なこと」だとか、「勝手に敷地内に入り込んで」って言うけれど、それなら、そもそもお散歩させたり、おやつを上げたりするのだって、「勝手に敷地内に入って」「勝手なことをやって」いたことにはならないんでしょうか。
まだお散歩代行をさせていたころ、2回ほど奥さんに会ったことがありましたが、そのときは、「いつも済みませんねぇ」なんて、ちょっとバツが悪そうにお礼を言ったんですよ! お散歩やおやつはOKで、連れていくのはだめ?
「それとこれとは違うでしょう」と言うけれど、どこが違うっていうんでしょうか。

確かに、勝手に連れていったことは、こちらが責められても仕方ない面もあったかもしれません。
でも、こちらの身元を明かさずに拉致したわけではなし、一言連絡いただければすぐにも返すつもりで、そのことも明文化していたんです。お散歩代行のときと全く同じ手続(?)をしているにもかかわらず、お散歩やおやつはOK、連れていくのはだめ。それじゃあまるで、D家にとって都合のいいことだけは享受する、「いいとこどり」しているようなものじゃないでしょうか。

先方の言っていることにはかなり矛盾を感じましたが、やはり「勝手に連れていった」ということを責められては、こちらにも非があることは認めざるを得ません。また、この人と話していてもムダだな……という気もしてきたので、単刀直入に、「改めてお願いします。ちびちゃんを譲っていただけませんか?」と聞いてみたんです。対するDさんの答えは「譲れません」でした。
「なぜですか? ちびちゃんがいなくなって、何か困ることでもあるんでしょうか」
「困ります。ちびは番犬として飼っているんですから」

あー、そうですか、番犬ですか! いなくなると困るんですよね! なのに、何で1ヶ月も私の手元に置いたまま、何の連絡もしないでいられるんでしょうかね!
正直、そう思いました。言っていることと、していることが全く矛盾しています。

「でも、お宅がやっていることは、ほとんど虐待に等しいんじゃないですか!」
思わず言ってしまいました! 言ってはいけないことだったかもしれないけれど、言わずにはいられなかった。
でも、D家の奥さんには真意は伝わらなかったようです。彼女にとっては、なぐったりけとばしたりという暴力行為が虐待であって、犬の生態を無視した飼い方は虐待には当たらない、という考え方だったみたいなんですね(これについては後述します)。
この一言で、もしかしたら相手の感情をさらに逆なでしてしまったのかもしれないと思い、言ってしまったことを少々後悔したのも事実です。

さらに奥さんは、「ちびは娘が拾ってきたので、娘の犬なんです。勝手に上げるわけにはいきません」と言うので、「じゃあ、お嬢さんに会わせてください」と言っていたときに、タイミングよくくだんの娘が登場しました。

「お嬢さんですか? ちびちゃん、私に譲っていただけないでしょうか」
「だめです」
「どうして?」
「おばさん(私のことだ!)、おかしいんじゃないですか。何でちびなんですか。犬が欲しければ、お金出せば幾らでもいるじゃないですか。何でちびなんですか」

お金の問題じゃないだろ〜が!

「でも、ろくにお散歩にも連れていってあげられなくて、ちびちゃん、かわいそうだとは思わないんですか」
「毎日散歩させなくちゃいけないっていう決まりでもあるんですか。うちはお金もないし、でも、ちゃんと注射もしているし(狂犬病予防接種のことか?)、具合悪そうなときには病院にも連れていくし、お父さんが時々は散歩に連れていっているし、うちの犬をどう飼おうが、うちの勝手じゃないんですか」

そう、確かにお宅の勝手ですよね……。これを言われてしまうと、赤の他人の私には返す言葉はありませんでした。

「わかりました。ちびちゃんはお返しします。でも、時々はおやつを上げたり、お散歩に連れていったりしてもいいですよね……?」
「だめです」
「どうして?」
「だって、情が移るんじゃないですか」

ばかか、このアホ娘は! 情が移るって、とっくに移ってるに決まってるだろ〜が!!!

……内心そう思いながら、それを表に出すことはできませんでしたので(笑)、その場でちびちゃんはD家の奥さんにお返ししました。
そのときにちびちゃんが身につけていたリード(引き綱)とハーネス(胴輪)は私が用意したものだったので、「これは返してくださいね」とお断りして、それらを外して、ちびちゃん本体のみを奥さんの手に返したんです。彼女も飼い主さんのことはちゃんと覚えていたようで、じっとおとなしくしていました。

aleai04.gifそして、その結果……

D家の奥さんに抱かれたちびちゃんに、最後にちゅっちゅして、「さよなら、幸せになってね」とお別れを言って、私は自宅に引き揚げました。
ちびはまたあの状態に戻ってしまうのか……。そう思うと、ぼろぼろ涙が出てとまりませんでした。
もちろん、あれだけのことがあったあとですから、Dさんも少しは考えて、ちびちゃんの扱いも改善されるかもしれません。でも、全く改善されない可能性だってゼロではないんです。
再びあの状態に戻ってしまうとしたら、私がよかれと思ってやったことは、かえってちびちゃんにとっては残酷なことだったのかもしれません。一度はごく普通の飼い犬並みの生活を味わってしまったちびちゃんが、またあの拷問のような状態に戻ってしまう。
彼女には理由なんか理解できないでしょうから、きっと、「どうして、どうして?」と考え続けるでしょう。そして、「でもまたきっと、だれか愛してくれるのかもしれない。お散歩にだって連れていってくれるのかもしれない」、そう思って、長い年月待ち続けるのかもしれません。そんな状態が死ぬまで続くのだとしたら……? あの子自身は何も悪くないのに、人間の身勝手さに振り回されてしまうのでは、余りにもかわいそうです。

ところがですね、結果は思わぬ方向に進んでしまいました。
自宅の前まで来て、後ろを振り返ったら、ちびちゃんが私のあとを追いかけてきていたんです。うれしそうにたったかたったか走りながら、私の顔をじ〜っと見上げて、まるで「かあちゃん、遊ぶの? 遊ぶの?」とでも言っているみたいでした。
またしても涙ぼろぼろになりながら、「だめ! ちび、帰りなさい!」ときつく言って、そのまま家に入ろうとしたんですが、このままほったらかしにして、万が一交通事故にでも遭ったらかわいそうだな、と思い直しました。そして、一たん外したリードをちびにつけて、D家に返すべく、とぼとぼと歩き始めたところ、向こうからD家の奥さんがやって来るのが見えたんです。
私がちびのリードを渡そうとすると、このとき初めて奥さんは私に頭を下ました。そして、「ちびをもらってください」と一言。

「まさか追いかけるとは思いませんでした。やっぱり、犬にはわかるんですね……」、それが奥さんの言葉でしたが、ちびが私のあとを追ったというのは、さすがにショックだったみたいでした。
私もこれ以上追い打ちをかけるつもりはなかったし、先方が下手に出ている以上、こちらも礼儀は尽くそうと思って、「改めてお願いします。ちびちゃん、私にください。幸せにしますから」ということで、何だかお嫁にもらうような妙な具合になってしまいました(笑)。

最後の最後は、飼い主が犬を選ぶのではなく、犬が飼い主を選ぶという結果になってしまったわけです。
これが、1月から始まって実に9ヶ月にも及んだ、ちびちゃんがうちの子になるまでのてんまつです。


afrui00.gif 私見ですが……

この1件を通して、私なりに感じたことが幾つかありました。

aleai04.gif「虐待」の真意

まず、ここまでお読みいただいた方には既にご理解いただいていると思いますが、D家のようなお宅では、本来、犬は飼うべきではないと感じました。
「ネグレスト」という言葉をご存じでしょうか。最近、児童虐待が非常に大きな社会問題になっていますが、D家のちびに対するやり方を見ていて、私はこの言葉を思い出しました。養育の怠慢・拒否というぐらいの意味で、動物に当てはめると、飼育放棄とでもいったらいいんでしょうか。
私が「あなたたちがやっていることは虐待に近い」と言った言葉、Dさんの奥さんにはかなりこたえたような印象を受けました。最後にちびを私に渡したあとで、しみじみと、「うちはね、動物をいじめたことはないんですよ。猫も飼っているけれど、それも捨てられていた子を拾ってきたんだし……」と言っていたからです。

確かにここのお宅では、動物をいじめるようなことはしていなかったと思います。もしもいじめを受けていたら、ちびちゃんはもっと性格のゆがんだ子になっていたと思いますが、素直なとてもいい子ですし……若干気は強いけれど(笑)。それを見ていても、決して意地悪な行為はしなかったんだろうということは、十分に理解できます。
でも、D家の猫もちびちゃんも、優しい気持ちから拾ってきたというのはわかるけれど、えさだけ与えてあとはほったらかしにしておくのでは、それは本当の優しさではないんじゃないかと、私には思われてしまいます。

これは、人間と動物、立場をかえて考えれば、すぐにも理解できることではないでしょうか。
もしも、人間が何年間もずっと鎖につながれて、食べ物は与えられるけれど、排せつ物は周囲に垂れ流し状態、鎖を外してもらえるのはほんの時たまで、ほとんどだれにも相手にされないとしたら? こんな状態が続いたら、きっと頭がおかしくなると思います。これを人間に対してやったら立派な犯罪行為に値するはずなのに、相手が犬の場合はおとがめなし。何かおかしくはないでしょうか。

私が「虐待」という言葉を使った真意、D家には恐らく通じていなかったと思います。ちゃんと食べさせて、生きながらえさせてきたし、いじめたりはしなかった。ただ忙しかったから、どうしてもほったらかしにせざるを得なかった。だから別に虐待していたわけではない。D家のお考えは、恐らくそういうことではないかと思います。でも、これを人間の世界に置きかえると、明らかに「ネグレスト」に当たる行為だと私は感じています。
なぐる・けるの暴力行為だけが虐待ではないんです。その動物が本来持っている生態を無視して、人間の都合ばかりを一方的に押しつける。そういう飼い方も、立派な虐待行為ではないでしょうか。

繰り返しになりますが、この場合の「本来持っている生態を無視する」とは、例えば犬の場合、群れをつくって生活する種であるにもかかわらず、ひとりぼっちで長時間過ごさせたことや、寝る場所・食べる場所では排せつしないものなのに、小屋の周囲が「うんちてんこ盛り」状態だったこと、十分な運動が必要なのに、余りお散歩をさせていなかったことなどが該当すると思います。また、「人間の都合ばかりを一方的に押しつける」というのは、「忙しい」というのを理由に、本来飼い主がすべき飼育を放棄した、ということにほかなりません。

aleai04.gif「動物を飼う」という行為は人間のエゴ?

犬や猫のようなペットとしての歴史が長い動物ばかりでなく、最近人気の高いハムスターやフェレット、プレーリードッグ、さらには虫類なども含む、いわゆるエキゾチックアニマルと呼ばれるものまで、ほんとに多種多様な動物が人間に飼育されていますよね。
私自身も、ハムスター、リチャードソンジリス、ハトなどの動物を飼育した経験があります。また、捨てられていた子猫を拾って、里子に出すまでお世話したこともありました。

犬も含めて幾つかの種類の動物を飼育して感じたのは、「動物を飼うって、人間のエゴなんじゃないだろうか」ということです。
なぜなら、人間が動物を飼育するということは、ハムスターにせよ犬にせよ、その動物が本来持っている習性をゆがめてしまうことにほかならないからです。
ハムスターだったら、逃げ出せないように小さなケースに閉じ込めて飼育せざるを得ません。犬の場合、広い場所でのびのび過ごさせてやりたいと思っても、日本の住宅事情ではそんなことはほとんど不可能です。狭い家の中に閉じ込めるか、庭で飼う場合には、係留する(つなぐ)ことが義務づけられています。また、一人暮らしの人が犬を飼う場合、1日のほとんどの時間を、犬はひとりぼっちで過ごさなければなりません。

こんな状態で生きることが、果たして動物にとって幸せなことなんだろうか。
しかし、そう考えたところで、「ペット」として人間に飼われるしか生きるすべがない以上、ひとたび人間の手が入った動物は、本来持っている習性から考えればかなりいびつな一生を送らざるを得ません。
だとしたら、たとえその動物にとってベストの状態を提供することはできなくても、縁あって「うちの子」になった動物に対して、できる限りのことをする義務が人間にはあるのではないでしょうか。
そうすることができず、人間の都合ばかりを優先するのなら、その人には動物を飼う資格はないと、私は思っています。

私自身、動物を飼育するようになってから、かなり時間的な拘束を受けるようになってしまいました。ハムスターやジリスはまだしも、特に犬の場合、非常に顕著です。例えば朝晩のお散歩は欠かせませんので、出かけたついでにちょっと1杯飲んで帰ろう……なんてこと、まずできなくなってしまいました(笑)。それよりも、まずお散歩です。飲みに行きたければ、一たん帰宅して犬たちをお散歩に連れていき、晩ご飯も与えたあとで、改めて出かける。これ、正直に言うと、非常に面倒くさいです。
あるいは、以前は仕事帰りにバレエのレッスンに行くことが当たり前でしたが、今はそれもできなくなってしまいました。まずは一たん帰宅、そしてお散歩、彼らの晩ご飯……。ふぅ。ほんと、めんどくさ〜い!って思うこと、しょっちゅうありますよ。
そうそう、旅行もできなくなりましたね(笑)。

その動物が本来持っている習性を犠牲にすることによって、人間と「ペット」と呼ばれる動物との関係が成り立つのなら、人間の側だって、自分たちが持っている何らかのものをあえて「犠牲」にしなければならないんじゃないでしょうか。窮屈な思いをすることも、本当にたくさんあると思います。
ですが、それを「犠牲」としか感じられないのなら、そういう人は動物を飼うのはあきらめたほうがいいと思います。動物がかわいそうですから。

話が戻ってしまいますが、D家に欠けていたのはまさにこの点ではなかったかと思います。
人間の都合ばかりを優先して、動物との関係が成り立つと思いますか?

aleai04.gif我が家の場合

このページでは先住のぽちくんについてはほとんど触れていませんが、2001年11月に迷い犬だったぽちくんを保護した直後は、庭に鎖でつないで飼っていました。
ところが、突然「げふっ、げふっ」という空せきを断続的にするようになったため、獣医さんに診察していただいたところ、心臓に少し問題があることがわかりました。また、フィラリアにかかっていることも判明しましたが、これは恐らく、迷い犬で放浪していた時期にきちんと予防できなかったためと思われます。
心臓に問題があるとわかった時点で、多少の迷いもありましたが、外につないでいたぽちくんを家の中に入れ、以降、彼はずっと「家犬(いえいぬ……こんな言葉、あるんだろうか?)」として飼育しています。

この「家の中で犬を飼う」という行為、実は私の家族は大反対だったんです……「だった」という過去形ではなく、今もいい顔はしていません(特に母)。幸い(?)、両親とは別々に暮らしていますので、反対されてもぽちくんを外に出さずに済んでいるんですが……。
母の言い分は、「あんな外で飼う犬を、何で家に入れるんだ」というものなんですが、要するに母の考えとしては、雑種の、しかもあんなでかい犬(約19キロ)は外につないで番犬にでもするものだ、ということなんですね。母にとって「家の中で飼ってもいい犬」とは、母の言葉を借りれば「座敷犬」、つまり小型の洋犬ということになるんでしょう。
日本犬はずっとそういう飼われ方をしてきた歴史があるので、母の認識もやむを得ないものがあるとは思います。

また、姉も、「お部屋の中に閉じ込めておくのはかわいそうなんじゃない? お外の空気のほうが好きなんだと思うけど……」なんてことを言っていました。ま、これも一理あるとは思います。

でも、現在の犬の飼い方の主流は「室内飼育」に徐々に変わってきています。ぽちを飼うに当たって、私も数冊の飼育本を読みましたが、どの本にも「犬は外に係留して飼うべし」なんてことは書いてありません。
むしろ、本来群れをつくって生活する犬にとっては、群れのメンバーである飼い主一家のそばにいることが最も望ましい、したがって、住宅環境が許すのなら、室内飼育をするのがベストである。どうしても室内飼育がムリなら、せめて犬小屋は、飼い主一家が最もよく集まる部屋、例えばリビングの窓の近くに設置するなどして、できるだけ飼い主一家のそばで生活できるようにするのが望ましい……みたいなことが書いてありました。

群れをつくって生活する動物である以上、ひとりぼっちにするのが最もかわいそうなんだということがわかって以来、両親や姉が何と言おうと、私はぽちを外飼いの犬にする気は毛頭なく、現在に至っているというわけです。
一度、父親が庭にサークルをつくってくれたので、その中でぽちを放し飼いにしたことがありました。ただ、サークルに欠陥があったのか、脱走されて大変な思いをしましたので、以来、サークルは布団干しがわりに活用しています(笑)。本当は、気候のいい時期の日中は外で過ごさせて、夜間や天気の悪い日には室内に入れるという飼い方が、犬の健康にとってはベストなのかもしれませんが、脱走されてはどうしようもありませんからね。

話がそれてしまいましたが、こうやって犬の生態だなんだと偉そうなことを書いている私の家族でさえ、「犬は外で飼うもの」と言ってはばからない現実があるんです。非常に残念なことですが……。
でも、それも少しずつ変わってきつつあるようです。たしか昨年だったと思いますが、屋外飼育と室内飼育の比率が逆転し、初めて室内飼育が屋外飼育を上回ったそうです。もちろんその裏には、小型犬の人気が高くなったという理由等もあるのかもしれませんが、「動物を飼うためには、その動物の生態にできる限り配慮する」ということを考える人が多くなっているのだとしたら、こんなにうれしいことはありません。


afrui00.gif 終わりに 〜待つ犬〜

長々とおつき合いいただいて、どうもありがとうございました。
最後に1つだけ、ぽちとちびと同居することによって感じたことを書かせてください。

前述したように、ぽちくんは迷い犬でした。ぽちくんを保護したあとに警察に届けたりしましたが、1件だけ問い合わせが来たのみで、結局飼い主さんは見つからず、うちの子として居ついてしまったわけです。でも、すごく人なつっこい子で、私にもすぐになれましたし、お散歩に連れていっても、家に友人が遊びに来たときでも、とにかく人と一緒に過ごすのが大好きみたいで、だれに対しても愛想よく振る舞う子だったんです。
そんなぽちくんを見ていて、私は、さぞや前の飼い主さんに愛され、かわいがれていたんだろうな、この子がいなくなって、飼い主さんはさびしがっているんじゃないだろうか。そんなことを考えていました。

ところが、今回ちびちゃんがうちに来て、私はその考えに疑問を持つようになりました。
これまで書いてきたように、ちびちゃんは決していい飼われ方をしてきた子ではありません。ほとんどかわいがられもせず、ほったらかし状態で、いつ見てもぼーぜんとした表情をしていました。
でも、徐々に私に心を開いてくれるにつれ、実はすごく人なつっこい子なんだということがわかってきたんです。あんな状態に置かれていても、この子は人間への信頼を失っていなかったんだな……。そう思わずにはいられませんでした。
だとしたら、あるいはぽちくんも、そんなにかわいがられていたわけではなかったのかもしれない。ぽちくんの場合、保護したときの状況からして、捨てられた可能性が高いと思われるんですが、それでもなお人間への信頼を失わずにいてくれたのかもしれない。私のぽちくんへの認識は、そんなふうに変化しました。

もう何年も前になりますが、まだちびちゃんがほんの赤ちゃんだったころの記憶が、私にはかすかに残っています。
当時、小さかったD家の息子さんが道路にしゃがみ込み、前方にいるちびちゃんに向かって、「ちび、来い、来い!」って両手を広げて呼びかけていたんです。それに向かって、赤ちゃんだったちびちゃんがよちよちと突進していく。余りのかわいらしさに、ずっと記憶に残っていたのかもしれません。
ちびちゃんも、かつてはかわいがられていた時期があったんです。それがいつからあんな状態になってしまったのかはわかりませんが、ちびちゃんの中には、かわいがられ、愛されていた記憶が残っていたんじゃないでしょうか。
いつかまた愛してくれる。一緒に遊んでくれる。かわいがってくれる。そんな日がきっと来る。そう信じて、何年もずっと待ち続けていたのかもしれません。

私は今、ぽちくんもちびちゃんも、もしかしたらずっと待ち続けていたんじゃないかという気がしています。自分を愛し、かわいがってくれる人が必ずいると信じて。
残念ながら、それは本来の飼い主さんではありませんでした。本音を言えば、私は今でも、ちびにとって一番幸せなのは、途中でしゃしゃり出てきた私が飼育することではなく、本来の飼い主であるD家の皆さんが、ほんのちょっとでもちびちゃんの待遇を改善し、たくさんかわいがって飼ってあげることだと思っているんです。
ですが、あのときD家の奥さんが私に「ちびをもらってください」と言ったということは、自分たちには待遇改善はできない、だからあなたにお願いします、という気持ちのあらわれからだったのではないかと思っています。
それを了解した以上、私には1つの命をあずかった責任があります。動物を飼うということは、すごくシンプルにいってしまえば、「その子の命に対して最後まで責任を持つ」ということではないかと私は考えています。

ものすごく重い責任をしょってしまったわけですが(それも2匹分も!)、人間への信頼を失わずに待ち続けてくれた(と勝手に私が思い込んでいるだけかもしれませんが)ぽちくんとちびちゃんに、できる限り幸せな一生を送らせてあげたいと思っています。
彼らが幸せなら、私もまた幸せなんです!

aleai04.gif最後に、動物を愛する皆さんに、ぜひ読んでいただきたい本を1冊紹介させてください。

アンジュール―ある犬の物語
本の分類としては絵本ですが、文字は全くなく、見ようによっては画集のような1冊です。
ある日、走っていく車の窓から投げ捨てられた1匹の犬……。
彼がたどったその後のできごとを、粗削りな筆致で描いています。
彼の表情、しっぽの動きに、私はまさに「待つ犬」の思いが凝縮されているように感じられてなりません。


afrui00.gif 追記 〜そして1年がたち……〜

“このページを書いている私の足元で、ぽちとちびがぐで〜っとだらしなく寝そべって、惰眠をむさぼっています(笑)。
これはこれでなかなかほほえましい光景なんですが、実は現在、2人の間にはすさまじいバトルが勃発していて、日々私を悩ませてくれています……とほほ”

上記の文章は、1年前のサイトに載せていたものです。
1年前、まさに上記のような「日々これバトル」の状況にありましたが、現在は、2匹のバトルもかなり沈静化しています。
理由の1つは、たとえ相性がよくはなくても、お互いがお互いの存在を認めることができたからではないかと思います。
もう1つは、ぽちくんの老化が、1年前とは比較にならないほど進んだこともあって、仮にお散歩のときにケンカが始まりそうになっても、すんでのところで私が止めることが可能になったこともあると思います。
ですが、やはり相性のよしあしはあるのでしょう、私がひそかに望んでいたように、2匹が仲よく寄り添っていたり、楽しそうにじゃれている姿は、ついぞ目にすることはできません。
人間の思うようにはいかないということなのでしょうか。

また、現在、ぽちくんは持病の心臓のふぐあいに加え、「クッシング症候群」というやっかいな病気にかかっています。
完治するのが難しいこともあり、免疫機能を高める効果があるといわれるアガリクスマイタケエキス等を使った代替療法を試みていますが、今後、どうなっていくのか、すごく不安な毎日を送っています。

ですが、少なくともぽちくん自身は、病気による苦痛はさほど感じていないように見受けられます。
それならそれでいいじゃないか。病気を持っていても、本人が毎日を楽しく過ごせるのなら、それに過ぎることはないのではないか。
長生きさせることはできないかもしれませんけれど、毎日を楽しく、苦痛を感じることなく過ごして生を全うすることができるのなら……。
飼い主として私が望んでいることはただ一つ、このことに尽きるのではないかと思っています。

そしてもう1つ、ぜひご紹介したい「犬の十戒」犬好きの方たちには大変有名なものですが、人間に飼われる犬たちは、日々、きっとこんなことを思っているのではないでしょうか。
これを読むたび、「動物を飼う」ということの意味を考えずにはいられません。


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