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レコーディングに寄せて
〜 「ALL WALTZ」 レコーディング・エンジニア 新島誠
琴川、鼓川、笛吹川、その三つの川は、あたかも弦楽器、打楽器、管楽器がアンサンブルを奏でるように融合し、ひとつの流れになる。合流するその地は山梨県牧丘町。葡萄畑が広がる勝沼盆地の北端に位置し、武田時代からの旧所名跡に囲まれている。2000年1月、寒さはたいへん厳しいが、すっきりと淡い青色を見せる快晴の空に魅せられながら私達は牧丘町民文化ホールを訪れた。これから3日間をかけて明石現さんのファースト・ソロ・アルバム「ALL
WALTZ」のレコーディングを行うために。
私はこのレコーディングの録音エンジニアとして同行したのだが、それに備え事前に何度も彼のコンサートに足を運んだ。明石さんが弾く19世紀ギターは現代のギターよりボディが小さく、音量がでない。とくに現代のギターは低音域の響きが豊かで、高い音もきらびやかである。しかし19cギターの繊細な音色に触れると、その柔らかい中音域、軽やかに歌うリズムがたいへん心地よく、すっかり魅せられてしまう。このレコーディングでは、その19cギターが持つ魅力を充分に引き出そうと、何度もマイクロフォンの位置を調整した。美しい音色を奏でる楽器と、それを包むホールの残響をうまくブレンドし、ワルツのリズム感を損なわぬよう努めた結果、耳にたいへんやさしく、心地よいサウンドが得られたのではないかと思っている。
レコーディングとは地道な作業の連続で、CDというメディアが持つ「何度も繰り返し聴くことができる」特徴のため、コンサートとは一線を画す演奏アプローチが必要となるため、何度も何度もテイクを録り重ね、慎重にジャッジしていく。明石さんは全11曲を3日間で録りきるというハード・スケジュールを、凄まじい集中力で駆け抜け、見事なテイクを残していった。
通常器楽演奏家のファーストアルバムとなると、その人の最も慣れ親しんだ楽曲や、華麗な技巧を披露できる楽曲で埋め尽くされ、どちらかと言えば演奏家としてのお披露目感が強い作品となるケースが多いように思われる。しかし「ALL
WALTZ」は、そのタイトルが示すとおり、全編ワルツ曲で占められたコンセプト・アルバムとなっており、ここには明石さんがコンサートで従来演奏していた楽曲はなく、アルバムのために編成された初々しい面々が並んでいる。明石さんは、このCDを持った全てのリスナーが、これらの楽曲に親しみを覚え、長く聴き続けてもらえればと常々語っており、その意思が明確に表されたリスナーのためのギター・アルバムとなっているのである。このようなコンセプト・アルバムを発表できるということは、明石さんが一演奏家に留まらずより大きな魅力を持った音楽家であるということの証明であろう。
「ALL
WALTZ」は、美しい小品が明石さんの手で暖められそして解き放たれた作品集となっており、肩肘を張らず、ゆったりと聴くことができるアルバムに仕上がっている。明石さんがこれを創りあげていく場に一緒にいた者として、このアルバムを是非とも多くの方々に聴いてもらいたいと、彼同様に願ってやまない。 |