相続


テーマ「借金の相続」


キーワード「相続した借金の支払いは慎重に」



――今日のテーマは「借金の相続」ということですが。


渋瀬 人が死ぬと、必ず相続が発生しますよね。そして借金を相続する場合で最も多いのは、自分の親や夫や妻が借金を残して死んでしまった場合と考えられます。

 そして、相続というのは、

 @人が死んだという事実が発生することで、

 A死んだ人の@)持っていた財産(プラス)および
          A)抱えていた借金(マイナス)が、

 B死んだ人の夫または妻、あるいは子供などに、

 Cそのまま、まるごと移っていく

 ことをいいます。

 つまり、借金を残したまま人が死んだ場合、その借金は、死んだ人の夫または妻、あるいは子供などに、当然に引き継がれてしまうことになるんです。当然に、借金も相続対象なのです。


――ということは、死んだ人の夫または妻、あるいは子供らは、死んだ人が残した借金を支払わなければならなくなるということですね。


渋瀬 その通りです。死んだ人にお金を貸していた人の側からみれば、死んだ人の夫や妻や子供に「お金を返せ」と当然に言えるようになるということです。


――支払わないで放っておくとどうなるんですか。


渋瀬 自分でお金を借りてそれを支払わない場合とまったく同じです。利子がどんどんたまっていき、支払わなければならない借金の額がどんどん増えていきますし、裁判を起こされて家や給料を差し押さえられたりすることもありえます。


――では、具体的にどうすればいいんでしょうか。


渋瀬 大きく分けて2つの場合について考えてみましょう。

 @借金もあるが、財産のほうが多かった場合
 A借金だけが残っていた場合

 まずは、死んだ人が借金だけでなく、財産もたくさん持っていた場合(あまりないでしょうが・・・)。つまり、マイナスの借金よりもプラスの財産のほうが多い場合です。この場合には、とりあえず、借金を返すために必要な限度で、財産すべてをお金に換えて、そのお金から返すことが考えられますね。


――相続した財産の中から支払いをするということですね。



渋瀬 ここで強調しておきたいのですが、支払うにしても、それが本当に支払わなければならないものなのかについては、きちんと調べたほうがいいということです。

 つまり、まず第一に、そもそも本当に借金があったのかをしっかりと確かめることが大事です。特に最近は、はがきや手紙で、裁判所や税務署、あるいは法律事務所などの名前を勝手に使って、もともとありもしない借金を返すように言ってくることがよくあります。

 したがって、突然「借金を返せ」というはがきなどが来たとしても、あわてて払ってしまうのではなく、まずは深呼吸をして、そのあと、それが本当にあった借金なのかを確かめてみるということですね。

 それから第二に、確かめた結果、借金があったことは間違いなかったとしても、さらに、

 @最後に支払ったときから、今年は何年経っているか(=時効が成立するかどうかの可能性を確認。返済不要になる)、

 A年20%を超える利息を、最低5年以上の間、支払っていなかったか(=利息制限法に基づく引き直し計算による元本額減少またはゼロなどの可能性)、

 についても確かめたほうがいいと思います。


――どうやって確かめたらいいんでしょうか。



渋瀬 とりあえず、借金を払うように請求されたら、すぐに払ってしまうのではなく「借用証書などの借入を証明する書類」や「過去の振込や借入などの取引経過の明細書」および「残っている借金総額の明細書」などを送ってくれるように相手に言うべきでしょうね。

 そして、送ってきたそれらの書類を見て、慎重に調べてみるということです。その結果、疑問を感じることがあれば、専門家のアドバイスを受けてみられたほうがいいでしょう。


――わかりました。では、死んだ人が借金だけを残した場合には、どうすればいいんでしょうか。



渋瀬 まず、本当に借金があるのかないのか、借金の額はいくらなのか等について、きちんと調べる必要があります。この点は、先ほどとまったく同じで繰り返しになりますが。要は、とにかく調べることは大切なことだということです。

 そして、支払わなければならない借金が確かにあるということになれば、取るべき道は大きくいって2つです。


――何と何ですか。



渋瀬 「自分たちのお金で支払うことにする」のか、それとも「自分たちにお金があってもなくても、支払わないことにする」のかの2つです。


――では、具体的に気をつけなければならないことを教えてください。


渋瀬 まず、「自分たちのお金で支払うことにする」と決める際には、自分たちの「お金の内容」を慎重にチェックする必要があります。

 具体的に言いますと、「自分たちには一応財産がある。だから、それで親の借金を支払うことにしよう」と決めたとします。

 しかし、財産といっても、その内容はさまざまです。一方、借金を返すのに必要な財産は、原則として「現金」です。たとえば、「ダイヤモンド」は買ったときは100万円でも、今売れば10万円あるかないかの金額にしかなりません。
 また、バブル経済の頃に買った「土地・建物」の場合、最近は買った当時の値段の2分の1か3分の1にしか売れないことも多いんです。しかも、売った代金には税金が掛かってくるのが原則です。

 そのことを頭に入れておいてくださいということですね。


――なるほど。では、「支払えるお金があるとわかった」場合に気をつけることを教えてください。



渋瀬 「支払えそうだから支払う」と決めた場合には、

 @支払わなければならない借金の内容をはっきりとさせること、そして、

 Aお金を貸してくれた人と十分に話し合って、いくらの金額を何回で支払っていくのかの計画をしっかりとたてることですね。

 なお、ここで注意していただきたいのは、相続人の間で話し合いをして、相続人のうちの誰かが支払うことで話がまとまったとしても、その話し合いの結果は、お金を貸してくれた相手方にはまったく関係がないということです。


――わかりました。では、「支払わない」と決めた場合、どうすればいいんでしょうか。



渋瀬 「相続放棄」という手続きを、家庭裁判所でとることです。


――詳しく教えてください。



渋瀬 はい。「相続放棄」というのは、たとえば、本当は死んだ人の子供だったとしても、相続に関わる問題については、子供ではなかったことにするという手続きです。


――つまり、相続人ではなかったことになるのだから、当然、借金は移ってこないことになるということですね。



渋瀬 その通りです。ただ、「相続放棄」の手続きを取ろうとする場合、注意しなければならないことがいくつかあります。


――何でしょうか。



渋瀬 まず第一に、借金も移ってこないかわりに、財産も移ってこないということです。つまり、「借金は要らないけど、家屋敷は要る」というようなことはできないということです。

 第二に、「家庭裁判所」で放棄の手続きを行う必要があるということです。

 第三に、放棄の手続きは、原則として「人が死んだときから3ヶ月以内」にしなければならないということです。

 したがって、急いで決断する必要があるということになりますね。


――今日、最初のお話で、何年か経ってから請求書がきてびっくりした場合を取り上げておられましたよね。



渋瀬 突然、借金の支払いを請求されたような場合については、「借金を残していたことを知ったとき〜たとえば、親の借金について、突然、請求書が届いたとき〜から3ヶ月以内」にすればいいとされることがあります。したがって、死んでからもう3ヶ月以上経っているからといって、すぐに諦めてしまう必要はありません。

 「相続放棄」については、正確な知識を持ったうえで、うまく利用されるといいと思います。


――なるほど。まとめますと「相続放棄」は、@なるべく早くA家庭裁判所に行って手続きをするというのがポイントですね。



渋瀬 はい。なお、最後に繰り返し申し上げておきたいのですが、「借金の相続」という場合、自分が借金したわけではありませんので、その内容がわからない場合が多いと思います。したがって、いかなる方法を選ぶにしても、まず、借金の有無・内容をきちんと調べることをおすすめします。その際、不安があれば、我々のような専門家を積極的に利用されるといいかと思います。


――今日は「相続した借金の支払いは慎重に」ということで「借金の相続」をテーマにして、お話をおうかがいしました。

(平成16年1月20日放送)