BBS
(不定期日記&備忘録。ご質問等の書き込みも大歓迎!)

テルミンという楽器が、いま脚光を浴びていることをご存じの方も多いことと思います。
例の映画がヒットした影響もあるでしょう。
また・・・
いわゆる「打ち込み」といわれる音楽が蔓延する中、音楽は人間がじかに操る楽器によって生まれる
という、考えてみればごく当たり前な音楽に対する姿勢が見直された結果であるという気が強くします。
自分自身、音楽とかかわってから「打ち込み」を創作手段としてきましたから、よけいそんな気がします。
(歌謡曲の新譜のオケが打ち込みというのは実に寂しいです。そこへいくとNHKラジオの「新ラジオ歌謡」は
いいですね。あのスタンス、大好きです。)
アーティストにとって「録音物」よりライブの重要性が増し、受け手にとっても「CD集め」よりも自分の好きな
アーティストと、「ライブ」という空間をいかに多く共有したかが、ファンとしての証となる時代です。
そして、僕がこれまで深くかかわってきたクラブミュージック・・・
最初はサンプリングという手法で、生演奏を導入していたわけですが、次第にプレーヤーによるリアルな
演奏が加えられ、終いには主客が逆転し、感動を喚起できるのは安ギャラで雇われた「ミュージシャン」
の生演奏だけという、実にサビシイ事態になってしまいました。「打ち込み」あるいは「つまみグリグリ(?)」
の表現手段としてのポテンシャルは、もはや使い尽くされきった感がありますな・・・(涙)
同時に、いわゆる「プロデューサーズ・ミュージック」というものの終焉を思わざるを得ません・・・。
カラオケBOX用のオケとかジングルは仕方ないとしても、(回転寿司屋へ行って「ウニが三陸産じゃない!」
といってボヤいても仕方がありますまい・・・。) しかし音楽そのものが「商品」であればこういった制作姿勢
は、今後通らないことは明白ですね。「三陸産のウニ」という贅沢が盛り込まれていればこそ、買うに足りる
「録音物」となるわけです(!?)。経済効率優先の安物がまかり通る時代では、もはやないでしょう。
こと音楽に関しては・・・。
テルミンなる楽器に興味を持ち自作したのは、今から30年以上前、4チャンネルのオープンマルチトラックデッキ
による宅録(自宅録音の略称、それまで音楽出版のための録音は「商用スタジオ」を使用するのが一般的だったが、
機器のローコスト化が進み、アーティストが自宅の録音機器を使用してかなりのクオリティーで作品を制作できる
環境になった。)を始めた頃、そこら辺に転がっていた真空管を使って自作したのが最初です。
この時はもっぱらSE用としての使用が目的でした。デッキはTEACのA-3340S、コルグの700Sが主な音源でした。
その後機材も充実し、宅録打ち込みによる音楽生活が始まりヴァニティーからのデビューを皮切りに、その後は
ダンス系の音を中心に、ベルギーのレーベルから作品をリリースしたりと打つ込みによる音楽活動が続きました。
時代的にも音楽はむしろ「音響」と呼ぶのがふさわしい様相を呈していました。
そして1999年の半ば、テクノという表現やクラブミュージックに限界を感じ始めたころ突然再びテルミンという
電子楽器が気になり始めたのです。しかもSEとしてではなくちゃんと演奏するための対象として・・・。
その年の10月にはついにPAIAのテルミンキット「Theremax」を個人輸入し作ってしまいました。
そうこうしているうちに、組み立てが難しいとされるこのキットの「私設オンライン組み立てマニュアル」の公開を
思い立ち「PAiAのテルミンキットTheremaxを組み立てよう」なるページを立ち上げるに至りました。
最初はだれも来ませんでしたが、例の映画「テルミン」が公開されるや週に1000人以上の方にアクセスいただ
いたこともありました。
その後、「組み立てたけど動かない」などのご相談も増え、修理までやることになってしまったのです。
しばらくして姉妹ページ「Etherwaveテルミンキットを組み立てよう」も作ることに・・・。


結局、「Theremax」と「Etherwave」の2台のメーカー製テルミンと関わったわけですが・・・・・・
僕の中でのテルミンは、クラシックの小品をピアノなどの伴奏で奏でたとき、聴くに堪える音色・・・つまり
チェロ、ビオラ、バイオリン、果ては胡弓と置き換えても(単音楽器という点は割り引くとしても)異存のない
音色であることでしたから、「ブラスバンド的」なEtherwave、「閉管楽器くさい」Theremax・・・これら2台の
音色に不満を感じ始めてしまいました。
じきに「自作の虫」が目を覚まし、理想のテルミントーンを求めて、ついに真空管テルミンを作ることに・・・。
(まあその後、半導体テルミンも製作し、音の悪さは真空管、半導体という素子によるものではなく回路設計
に拠るところが大だとの結論を得るに至るのですが・・・。でもしかし、テルミンのアンプは真空管に限りますね。
これだけは譲れません。ついでに言うと、テルミンのスピーカーは平面バッフルがベストです。)


上の写真が、この時期一番初めに作った真空管テルミンです。
ケース底面にスピーカーが付いています。これ一台で音が出るオール・イン・ワンなテルミンとして製作しました。
いままで聴いてきたメーカー製テルミンとはまったく次元の違う音で、これほどいい音になるとは自分でも正直
思いませんでした。
このころある会社から、真空管テルミンの製品化のオファーをもらい、2号機を製作することになりました。
真空管テルミン1号機で得たノウハウが投入され、アンプの出力も大幅に増強されています。スピーカー部
は1号機の密閉式から背面開放形へと変更されました。スピーカーユニットは上面を向いていますが、後部
は開放されており、床面に反射した音が周囲へ拡散される設計になっています。単一の指向性を持った出音
から、より複雑な位相を伴ったアコースティックな楽器のような出音にするための工夫でした。
この試作機は、原宿の楽器店「Five G」へ展示していただいたので目にされた、あるいは試奏された方も
いらっしゃるかもしれません。
これを元に、更に具体的なプロトタイ」プも製作しましたが、デザインに重点を置いた結果、筺体コストの上昇
等で「お蔵入り」に」なったようです・・・。
この頃はさすがに映画「テルミン」によるフィーバーも一段落という感じでしたが、残念な出来事でした・・・。


こういった状況の続く中、独自のテルミンを製品化したいという欲求はいよいよ強くなり、真空管テルミンの試作が
続くことになります。こういった状況で初めに作ったのが、以下の画像の垂直型真空管テルミン。


続いて製作したのが、このページトップ写真の真空管テルミンです。
真空管は高圧(100V以上)で動作させるのが通常ですが、上の真空管テルミンは24Vという低圧で動作させて
います。「視覚的な訴求」を考慮し、真空管を露出させた結果、安全面を考慮せざるを得なくなったためです。
(上の写真の縦型真空管テルミンも、同様な理由から48Vで動作させています。)
さて、こいつをどなたかに弾いていただき、モニターしていただけないかなぁ〜。というわけで、さるプロ奏者の方
のもとへお送りし、感想をお訊ねしました。(普段はシリーズ91をお使いの方なのでドキドキ・・・。)
で・・・・・・・・
返ってきた答えは、音色に関しては大いに評価していただいたものの、それ以外のすべてがブーイングの嵐!!
これにはさすがヘコみました・・・。じっさい、3〜4日寝込んでしまいました。
やっと気力を取り戻し、奏者の方が送ってくださった、このテルミンの演奏記録や、ノイズを記録したMDの分析を
する日々が続きましたが、得た結論は「真空管の弱点が不満の種」というものでした。まあ、真空管をしゃにむに
低圧で動かしたことによるシッペ返しも否定できませんが、真空管という「発熱」する素子を使用する結果として
発振周波数の不安定さをもたらし、しいては現場で使えないテルミンになっていることが判明しました。
音は良いが、楽器としての安定性を欠く「真空管テルミン」を捨てざるを得ない現実が痛かったです・・・。
でも、真空管テルミンの名誉のために言うと、十分なウォーミングアップ時間を取り、機体内部の通風を最小限に
抑えれば、半導体テルミンに劣らない安定性は確保できます。(ファイブGに展示した真空管テルミンみたいな。)
真空管を上部に露出させたのがまずかったようです。ただ奏者の方にもご指摘いただいた「価格」に関しては
改善のしようがないですね。真空管を使ったテルミンは確実に高くつきます・・・。
「真空管テルミン」で味わった独自の音色を半導体回路で再現できないものか。」
これが否応なく、次の目標となりました。
基板を作り、廃棄してはまた作るという日々が延々と続きました。
こういった機器の場合、効率という「命題」のもとにだけ、とりあえず機能するシュミレーションソフトなどは、
クソの役にも立ちません。すべては実際に組んでみて、自分の耳で検証するという作業を強いられます。
こういった地道な作業から出来上がったのが下の写真のテルミンです。
これが、僕自身で立ち上げたブランド「TAK・テルミンラボ」から現在リリースされている「e-winds」の原型です。

ご存知のようにテルミンは、非常に近い発振周波数を持つ、2つの高周波発振器の出力を混合することで、
音として人間に聞こえる周波数(ビート)を作り出し、楽器として機能させる装置です。
1個の高周波発振器の周波数は固定しておき、もう一個はアンテナに対する手の距離による静電容量に
よって微妙に周波数を変化させ、これらのビートを取ることで楽器音を得るという仕掛けです。
高周波発振器の歪は直接楽器の音として響いてきます。
イーサウェーブの音の硬さの原因のひとつには、高周波発振器の歪の多さによるものです。
テルミンの音色に対する人の好みは「サイン波」的な丸い音が好きな方と、クララのCDで聴くことのできる、
アクのある音が好きな方の、2種類いらっしゃると想定されたので、まず極端に丸い源波形を作り出し、それを
加工することで倍音を付加するという設計方針を採りました。
電流を押さえ気味で動作させたトランジスタ発振器と、混合のための出力を発振トランスの2次側から取る
ことで高調波を除き、きれいな波形になるよう工夫しました。
「引き込み」といわれるやっかいもの・・・・・・
ところで、非常に近い発振周波数を持つ2つの高周波発振器は互いに影響しあい、一方の周波数を少し変え
ようとしても(テルミンの場合はピッチアンテナへの手の動き)他方と軽くロックされた状態にあるため、アンテナ
から手が遠い領域で「不感(?)」になる現象が生じます。結果として低音域が出ない状態になります。
逆にこの引き込みが少ないと、ヌルを取るのが大変になったり(ピッチアンテナから手を離して来てもなかなか
音が切れない))、ヌルを取った状態で奏者がテルミンから離れると、音が出てしまうということになります。
イーサウェーブ・プロへのクレームとしてこの状態への不満を訴える方もいらっしゃるようですね・・・。
でも、本当はこちらのほうがテルミンとしては「正直」な動作なのです。ヌルを取ったとき近くにいた体が、
アンテナから遠くなるのですから、バランスが崩れ音が出るのが当然なのです。
引き込みが少ないことで、アンテナから遠い部分の感度が高まったと言い換えることもできます。
演奏できる低域も下がり、ごく低い音域での演奏がしやすくなります。
しかし、一般にはイーサウェーブぐらいの引き込み量が好まれるようですね。
「e-winds」は基板上の半固定ボリュームで、この引き込み量が調整できるようになっています。組み立て後
個体によって微妙に異なる引き込み量(だからやっかいなのですが・・・)を合わせ込むためと、奏者の方の
好みで変えることができるようにしたかったからです。引き込みの量は音質にも影響し、多いと音が明るく
なります。
倍音を発生させる方法は、真空管式の時にヒヤリングの末決定した、ゲルマニウムダイオードによるクリッピング
回路をアレンジして採用しました。
さて、これでピッチジェネレータ周辺の設計がやっと落ち着き、次は音量制御回路の検討へと・・・。
音量アンテナと手の距離を電圧に変換し、その電圧でアンプ利得を制御するというのがテルミン共通の音量
コントロールの方法です。電源はACアダプタによる単電源というコンセプトなので、電圧増幅のオペアンプの
使い方にひと工夫必要でしたが、音量アンテナへの手の動きにより、コントロール電圧を発生させる回路の
設計は意外とすんなり運びました。問題はこの制御電圧を使った音量のコントロールをどういった素子で行う
かです。
避けるべきは、アナログシンセ的な手法・・・つまりOTAやトランジスタで組んだ、いわゆるVCA回路。実測値は
わかりませんが、いずれも音量を下げたときの歪が多く感じます。音量を下げるに従がってとんがった音になる
のは自然の理にかないません。昔はけっこう低歪な使い方のできるVCA専用ICも市販されていたのですが、
現役では望むべくもありません・・・。リングモジュレータの使用も検討しましたが、ICの値段が高いのとノイズが
多くなりがちだった過去の経験からボツ。
で、最初試したのはLEDとCDSによるフォトカプラでした。しかし最大音量から最小に持っていったときの追従性
が悪くボツ。
音はスコブルいいのですが、いまいち音の切れが悪いのです。
次に目をつけたのが、音量、バランス、トーン等を電圧でコントロールできる音響機器用のコントローラICでした。
これは非常にうまく動いてくれました。コントロールカーブも指数的に変化し、滑らかな音量変化が可能になり
ました。(フォトカプラを使用したときは、別に制御カーブの補正回路が必要でしたが不要になりました。)
小音量時の歪感もなし。まあ音響機器用ですので当然ですが・・・。
これで、まあ不満(後述)はまだ残るものの、「半導体で真空管テルミンの音を」という当初の目標は、テルミン
「本体」レベルでは一応達成されました。



「e-winds S」
e-windsは中国あたりで作られている量産品と勘違いされている方もいらっしゃるようですが、
生産はすべて1台単位での僕自身による手作りです。楽器店「ファイブG」さんには常時在庫があるように
発注をいただき、在庫していただいておりますが、基本的に在庫なしの受注生産品なのです。
工程の中で一番重要なのが調整作業です。アナログ機器最右翼(?)たるテルミンは、組み立てれば
即動く機械ではありません・・・。調整作業を経て、はじめて楽器としてのパフォーマンスを獲得するのです。
しかも、各パラメーターは計測器等で数値化できるものではないので、調整作業は、ひたすら勘だけが頼りの
「職人技」的な作業にならざるを得ません。この作業が最も時間がかかるし、最も重要な作業なんですね・・・。
「キット」でのリリースへのご要望も多数お寄せいただいておりますが、上記の点で二の足を踏んでおります。
2005年1月、僕も50歳になってしまいました・・・健康でいる限り作り続けたいと思っておりますが、
あと何台作れるのかな〜・・・などと考えると、夜中にたまらない気分になることがあります・・・。
若い頃には考えもしなかったことです。男性更年期ってやつですかね・・・。
近年、同窓生がバタバタと逝ってるし、寂しいけどそういう年なんですね〜もう・・・。
保証期間(?)はとっくに切れている年齢です(^^;;

こちらは僕専用モデル!!非売品です。
わが社の1本アンテナテルミン「UNICONE-EX」で好評だったトーンエキスパンダ回路を
組み込んでみました。さしあたり「e-winds-EX」ってところでしょうか。
各アンテナの調節ボリュームには多回転ポテンショメータを使用。ヘッドホンジャックも付いています。
(製品化の予定はないのですが、どうしてもという方にはご相談に応じてもいいかな・・・。)
でもまだ決定的に足りないものが・・・・・
半導体テルミン「e-winds」は僕が自作した真空管テルミンの音を目標に設計してきたことは上の方で書きました。
何が足りないか書く前に真空管について少し書こうと思います。僕は理系の人間ではぜんぜんないので、主観的
というか、経験主義的な表現になってしまうことを、前もってお断りしておきます。
真空管とは何かは改めて解説する必要もないとは思いますが、これは「前々世紀的遺物」たる電子部品です。
僕の子供の頃は、テレビもラジオも、今のコンポ的な「ステレオ」も、当時はやりのテケテケギター(?)のアンプも、
テープレコーダーも、すべてにこの真空管が使われていました。今ではトランジスタやICがやっている仕事を「彼」
がやっていたのです。
さてさて本題・・・。
ごく簡単に言ってしまうと、真空管を使った増幅回路を考える場合、次の2つの要素があります。
@: 1つは単純に「増幅」という場合。
ある音を大きくしたい場合、10倍20倍100倍とどんどん大きくできるかというと、電源電圧などいろいろな制約
からある一定の出力電圧を超えると歪みだします。真空管の場合、この歪みの種類と現れ方に特徴があります。
半導体の場合はいきなり歪みだし、聞くに耐えない音になってしまいますが、真空管の場合は波形片側から
じわじわと歪み出すという特徴があるのです。(3極電圧増幅菅を想定しての、ごく単純化した表現ですが・・・。)
ちょっとした波形片側だけの歪みは、不快に聞こえず、むしろ「潤いやエネルギー感が増した」というふうに聞こ
えたりします。この性質を積極的に利用したのが「真空管プリ」と称する製品群なのです。
A: そしてもうひとつはスピーカーをドライブする「ドライバー」としての側面・・・。
スピーカーにつながれたアンプは、スピーカーの振動板を振動させるわけですが、その制動特性とか、周波数に
より抵抗値が異なるのが常なスピーカーに対して、アンプ側がどんな反応をするかなどなど、いろいろな要素が
重なって、半導体アンプ、真空管アンプでは音質が大きく異なってきます。
これはよっぽど「ナニ」な人でない限り、一聴すれば即わかるぐらいの大きな差を生じます。
さらに実は、真空管アンプには5極管やビーム管などの多極管を使用したものと、3極管を使用したものの2種類
があって、3極管パワーアンプの場合は概して刺激が少なく、音離れがいいという感じに聞こえます。特にテルミン
に使用した場合、より楽器的な、あたかもアコースティックな楽器を鳴らしているような独特の鳴り方をします。
かなり主観的な表現になりますが、音の空間への浸透性が増したように聴こえます。(まさにエーテル??)
テルミンにとってこれ以上のアンプはないと僕は思っております。
一方、多極管アンプはギターアンプに多用されます。ブルースや初期ロックを演るにはなくてはならないアイテム
ですね。ロシアあたりを中心にいまだに真空管は製造されていますが、お得意様はこれらギターアンプでしょう。
しかし、エレクトリックギター用として3極管を使用したアンプを使うと、じつにショボイ音がします・・・。(実験済み)
でも、エレクトリックバイオリンやチェロ、ピエゾマイクを使用したセミアコではいい感じになりそうな気がします。
真空管を使ったオーディオアンプは、なんか近年「ブーム的」に盛り上がっているようですね。
多極菅を使用したものなのか、あるいは3極管(多極管を3極菅として使用したものも含む)なのかを確かめた上、
それぞれのテイストをぜひ楽しんでいただきたいと思います。半導体アンプに慣れ親しんだ耳には、かなりの
カルチャーショックを受けること請け合いです。聴きなれたライブラリーも新鮮に聴こえると思います。
(オーディオマニアな方のために付け加えておくと、ここまでの記述の「真空管パワーアンプ」はNFが0〜せいぜい
10dbあたりでの話です。真空管アンプもOTL回路の採用や、NFを大きくするに従い、半導体アンプと区別が付き
にくくなります。これも実験済み。)
さて、「e-winds」の音の手本とした真空管テルミンのスピーカーを鳴らすためのアンプはどのようになっているか
というと、前出の真空管の特徴@とAがうまい具合に合わさった動作をする、オーディオ的な書き方をすると
「3極管シングル無帰還パワーアンプ」と呼ばれるものを使用しています。実際には多極管「EL34」の2つの電極
どうしを外部で接続し3極管として使用しています。(3極管接続)
ファイブGに展示してあった物は出力5ワットでした。これでフルートの生音ぐらいの音量が出せます。
半導体アンプですと、最大出力5ワットを越えるといきなり歪み、音が完全に潰れてしまいますが、真空管の場合
は再三書いたようにだらだらと歪だし、最大出力を超えても極端に音が破綻しません。しかも3極管パワーアンプ
の特徴である音離れのよさと遠達性も得られます。

ファイブGに展示した真空管テルミンのアンプ部分。

真空管テルミン1号機のアンプ部分。こちらは「6BM8」の3極管接続。
出力は1ワットそこそこですが、小スペースでの演奏には十分な音量です。
で、何が言いたいのかというと、この真空管アンプ独特の動作が、実はテルミンにとってとても重要なのです。
テルミンの音量のコントロールは単に音の大きさだけを変えているに過ぎません。普通の楽器というのはフォルテ
領域では音量が上がると同時に倍音も増えます。僕はテルミンにもこの要素が必要と考えます。
このアンプを使うと、音量が上がるにつれ真空管アンプ独特の歪(音楽的歪=倍音)が加わり、単に音量の増減
だけでは絶対に得られない、フォルテ領域での絶妙な表現力をテルミンに与えることができるのです。
こういったアンプで鳴らしたテルミンの音を一度味わってしまうと、普通の半導体アンプでは実に物足りなく感じます。
では、製品化する上でどう対処するか・・・。
真空管プリ的なものを構成し内蔵する??
これは無理です。なぜなら真空管は発熱するのです。これは宿命です。発熱部品がテルミンの内部にあると
電源を入れてから動作が安定するまでの時間がえらく長くなります。イーサウェーブ等のユーザーにとっては
まどろっこしくてしょうがないでしょう。
半導体で真空管をシュミレートした回路をこしらえて内蔵する??
これもペケ!。波形片側が歪むあたりまではなんとかなりそうですが、真空管はこの片波形歪んだ状態からさらに
入力を増していくと、独特の演技力を発揮し始めます。出来損ないの鋸歯状波的なスパイクを生じてくるのです。
和音を入力すると、さすがにこのレベルでは聴くに堪えない音になってしまいますが、さいわいテルミンは単音楽器
ですので、このへんをちょうど最大音量あたりにぶつけると、じつに可憐なフオルテシモを演出できるのです。
ここまでの動作は、さすがに半導体使用の「インチキ」ではシュミレーションしきれません・・・。
結局、さしあたり真空管の動作@を再現するための真空管を使ったユニット「チューブプリ」をアタッチメントとして
リリースしました。また現在、木製脚部とチューブプリを合体させた製品も開発中です。

製品化されたテルミン専用真空管プリアンプ「チューブプリ」MV02
「e-winds」本体と、続いて自信作「チューブプリMV02」を市場へと送り出したわけですが、程なくこの2つを評価
して下さるプロ奏者の方にも恵まれ、実に心強かったと同時に、開発姿勢の正しさを改めて確認した次第です。
実にうれしい出来事でした・・・。
さて次は真空管の特徴Aに関してですが、これはリアルな真空管アンプを用意せざるを得ないでしょう・・・。
ファイブGに展示した真空管テルミンのアンプ部分の重量は、出力たった5ワットにもかかわらず10kgぐらいに
なります。できるだけ軽量化し製品化できるよう現在取り組んでおりますが限界もあります。持ち運びも大変に
なると思いますので、そういったことをいとわないハイエンドユーザー向けのアイテムになりそうですね・・・。
スピーカーシステムに関して・・・・
僕は常々スピーカーシステムには、2種類の類型が存在すると思っています。
類型T・・・・
ひとつはごく一般的な形式。つまり前面にスピーカーユニットが取り付けられており、音は1方向にしか飛び
ません。コンポやラジカセ、多くのオーディオ用、スタジオモニター用のシステムがこれに当たります。
類型U・・・・
もうひとつは、いわゆる「音場形」といわれるもの。
これに関しては古くは「BOSE 901」が代表格でしょう。70年代に一世を風靡したスピーカーシステムです。
前面には(つまりリスナーがわに)1個のスピーカーユニット、背面に8個のスピーカーユニットがマウントされた
システムでした。スピーカーユニット合計9個のうち、音を聴く人に直接向けられたスピーカーはたった1個。
あとの8個は背面に取り付けられ、リスナーは前面に取り付けられた1個のユニットの発する直接音と、背面の
8個のスピーカーの発する音が背面の壁などに反射した「間接音」を聴くようになっています。
いっぽう、同様に70年代に活躍したシステムとして、ビクターの球形スピーカーシステムがありました。
こちらは球体の筐体の各方向に小口径のユニットが取り付けられており、当時、無指向性スピーカーシステム
の代表格でした。これも類型Uに属するでしょう。
さらに時代を遡ると、スピーカーユニットを前面と上面へ、1個づつ取り付けた自作システムも流行ったことが
あるようです。これもこの類型入れていいと思われます。
テルミン用スピーカーシステムの要件・・・・
完全に出来上がった音楽ソースを聴くのなら、類型Tのシステムが適しているように思います。
デジタル機器の発達で、音場に関するプロセッシングが容易になり、音源の完成度も増していると思うからです。
しかし僕のオーディオ歴の中での経験では、平面バッフルも良い音がします。類型Tのシステムでは1方向しか
音が飛びませんが、背面にユニットが露出した構造の平面バッフルでは、背面からも位相が180度異なった音が
放出されます。これが壁などにぶつかり、より複雑な位相を持った音を部屋中に拡散させるからです。
特にアコースティックギターやピアノなどの無加工な音源(生録)を鳴らすと、独特の臨場感をもたらしてくれます。
で、僕は宿命的に単純な波形しか出せない、しかも単音楽器テルミンを、より音楽的で飽きない音色で聴かせる
ためには、平面バッフルも含めた類型Uのシステムの方が、断然向いていると考えます。
アコースティックギターやバイオリンなどを「発音体」として見た場合、あちこちへ向けて音が飛ぶ「無指向性」的な
性格が大きいのです。スピーカーだけが唯一の「発音体」であるテルミンには、類型Uの性格を持ったシステムが
絶対必要だと考えます。
また、平面バッフルを推す理由のもうひとつは、密閉型やバスレフのシステムに起きがちな低域での不快な付帯音
が発生しないという点があります。スピーカーシステムの大半を占める密閉型やバスレフシステムは、いってみれば
スピーカーという「皮」を張った「太鼓」ですから、「胴鳴り」が起きます。これがテルミンの低域に「ウンウン」という感
じで付きまとうのです。テルミンの低音がくぐもりがちになるという不満は、この辺に原因があると考えられます。
平面バッフルの場合、こういったことが起きにくいのです。
さらに、背面からも音が出るという特徴から、ステージ等でも客席、奏者、伴奏者すべてのエリアを1台のシステム
でカバーできるので、利便性の点でも優れていると思います。


e-windsの出荷時調整に使用している、自作パワードスピーカーシステム。
背面にもユニットがマウントされている。
密閉型システムなので、低域がくぐもりがちになり演奏用には向かないが、
背面ユニットの音場効果は実感できる。